79. 特許権の権利期間の長さと特許権の個数
相手商品を攻撃できる特許権が多いほど特許戦力が強いという事はいえるが、特許権の個数に特許戦力が比例す
るとは言えない。ある商品を生産するために必須の技術が2つあるとする。その1つの特許権を行使した後に和
解して実施料を請求したとする。この実施料は相手が商品を経済的に生産できる範囲内のものとなる。なぜなら
ば、経済的に生産できないほどの高率の実施料率であると、生産しなくなるので、実施料は得られないからであ
る。したがって、特許権が1つであろうと2つであろうと、相手に請求できる実施料率には、その商品の特性と
相手企業の特性に応じた同じ上限値があることになる。このような場合に、相手に実施許諾する特許権は1つの
権利とすべきか、2つの権利とすべきかが問題となる。特許権者の立場からすると1つの権利を許諾しても、2
つの権利を許諾しても得られる実施料は同じである。相手は、その商品を生産するためには2つの特許発明を利
用せざる負えないし、その商品の生産に応じて支払える実施料の上限値も同じであるためである。マーケットで
競合しない相手に特許権の実施許諾をして、実施料を稼ぐことを目的とする場合には、2つの特許権の実施許諾
をした方が良い。なぜならば、2つの特許権の片方が権利満了しても、他方の特許権が存続していれば、実施料
が同じだけ得られるからである。マーケットで競合する相手に実施許諾する場合には、1つの特許権の許諾だけ
にとどめるほうが良い。なぜならば、許諾してない方の特許権は、いつでもマーケットから相手を排除できる武
器として活用できるので、相手の特許権への対抗力が温存されるからである。
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