75. 活用可能特許の抽出コストと特許権維持コストを考慮した特許パワー評価

特許権をたくさん保有していればいるほど、本当に特許パワーは強くなると言えるのであろうか?
ここで特許権の個数をN個とする。N個の特許権が分類されておらず、属性値も付与されていない場合には、権利 行使対象の他社製品Aに対する権利行使に活用可能な特許権の抽出コストは、Nに比例する部分とNの2乗に比例す る部分から成り立つ。
N個の各特許権について属性値を付与する作業には、1件当たりC1円のコストがかかるとする。N個の特許権を 属性値の大きい順番に並べる場合、1つの特許権を残りの(N−1)個の特許権と比較する処理をN回繰り返すとの 状況になるので、おおざっぱに言って、そのコストはNの2乗に比例する。比例係数をC2円として、活用可能な 特許の抽出コストをQ1とすると、Q1は次式で示される。
Q1 = N×C1 +N×N×C2
特許権の維持コストQ2は、特許権の個数に比例するので、特許権1件あたりの維持コストをC3とすると、Q2は 次式で示される。
Q2 = N×C3
また、特許権を権利行使する場合の実態を考えると、特許権侵害訴訟においても、ライセンス交渉においても、1件 の相手方製品に対して、1件の特許権を活用するよりも5件の特許権を活用する方が勝つ確率も上がるし、得られる 実施料も増大する。しかし、5件の特許権を活用する場合も、20件の特許権を活用する場合も、得られる実施料は 同じとなる。ある一定の件数以上の特許権を活用しても、相手方が支払えないほどの実施料は取得できないために、 得られる実施料が飽和するためである。
経験値からみて、5件の特許権が1つのケースでの活用の上限値であると考える。
すなわち、特許パワーのうちの実施料取得能力をP1とすると、P1は活用する特許権の件数が5件までは件数に比 例し、5件以上は一定値に飽和する。活用する特許権の個数をN1とし、実施料取得能力の飽和関数をF1とすると、 P1は次式で求められる。
P1=F1(N1)
また、1件の訴訟やライセンス交渉において、裁判官や企業の交渉担当者のマンパワーからみても取り扱える特許権 は5件程度が上限と考える。
すなわち、特許権ハンドリング能力をP2とすると、P2は活用する特許権の個数が5件までは特許権の個数に比例する が、それを越えると、減少していく。これを関数F2で表現すると、次式となる。
P2=F2(N1)
ここで、活用可能な特許権の個数N1は、保有している特許権の個数N個に比例する。
N1=K×N
権利行使の対象製品Aに対して発揮できる特許パワーPは、実施料取得能力P1に特許権ハンドリング能力P2の積に 比例する。そして、P1×P2で示されるパワーを形成・維持するために消耗するコストであるQ1+Q2に一定の係数を 掛け算して得られる悪影響を受ける。したがって、他社の対象製品に対する特許パワーPは、次式で示される。
P=P1×P2−λ×(Q1+Q2)

これを変形すると、次式となる。
P=F1(N1)×F2(N1)− λ×(N×C1+N×N×C2×N×C3)
この式から言えることは、「他社の対象製品への権利行使に用いる特許権の個数が5件になるあたりまでは、権利行使に用いる 特許権の個数に特許パワーは比例するが、それを越えると他社の対象製品を攻撃する、特許パワーは減少する。 特許権の保有件数が大きいほど、活用可能特許の抽出コストと、特許維持コストが増大する。他社の対象製品を攻撃 するための特許パワーにおいて、過剰な特許権の保有はかえって、特許パワーを低下させる。膨大な特許権も整理されていな ければ、かえって特許パワーを減殺することになる」ということである。

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