73. 自社特許を侵害する他社製品の情報把握(侵害摘発)の効率的実行
侵害摘発は、自社特許と他社製品の対応付け問題である。
すなわち、N個の自社特許とM個の他社製品に関して、技術が類似しているものの対応付けをいかにコストを抑えて
、効率的に、そして高精度に行なうかという問題に帰着できる。
この対応付けは、大きく分けて3つの処理からなる。対応付けの対象とする特許の抽出。対応付けの対象とする他社
製品の抽出。特許と他社製品の比較対応付けの3つである。
対応付けの対象とする自社特許の抽出も、対応付けの対象とする他社製品の抽出も、属性評価に基づいて行なう。
属性評価は、人間が行なうことが基本であるが、場合によってはコンピュータで自動的に行なえることもある。
侵害摘発という観点では、自社特許には、取得国,権利範囲の広さ,権利の残存期間,権利範囲の把握の容易性,
製品情報との比較の容易性,特許性の度合い、技術分野や製品分野という属性がある。
また、他社製品に関しても、侵害摘発という観点では、実施行為の行なわれている国,技術分野や製品分野,売り上
げ規模,単価,購入の容易性,権利行使が可能な他社かどうかというような属性がある。
比較対応付けの対象の抽出ということでは、属性値に基づいて評価を行ない、評価値が高いものから順に比較対応付
けの対象とするという方法と、評価値が基準値を越えていると判明した順序で比較対応付けの対象とするという方法
がある。自社特許の個数N個と他社製品の個数M個が小さい場合には、評価値の高いものから順に比較対応付けの処
理対象とするということができる。しかし、MやNが膨大であったり、数えることもできないという状況であれば、
評価値が基準値を越えたものを比較対応付けの処理対象とするということになる。
対応付けの候補の抽出は、評価値の高い自社特許を抽出し、その抽出した自社特許の技術分野や製品分野と国の属性
からみて、マッチング可能性のある他社製品の中で、属性評価値が高いものを選択する。
最初に着手する自社特許が決まったら、その自社特許と同じ技術分野や製品分野の自社特許に関しても、他社製品と
の比較対応付けをまとめて行なった方が効率的である。
自社特許と他社製品情報の比較対応付けとは、技術分野,解決した技術課題,効果やメリット,機能,技術構造を
比較対応付けるということである。
ここで問題となることは、特許情報と製品情報では、使用する用語が異なるので、対応付けが困難であるという事と、
製品情報には特許情報におけるIPCに相当するものが存在しないという事である。
特許されている技術で実現される機能を、対応する商品の業界ではどんな名称で呼んでいるかを把握することが、極
めて重要になる。
そのような名称やキーワードを把握できたら、特許情報データベースに重要情報として記録すべきである。
さらに進んで、インターネットなどを検索するための検索式として登録しておくことが良い。
例えば、特許第2077044号(特公平7-119780 )に関してであれば、検索式Aをgoogleを利用するものとして、
自分の検索ツールに登録できる。
(このケースでは、侵害訴訟を行ない、判決が出ているので、判決文を読めば
どのような他社製品情報を使用したかがわかるので、判決文へのリンクを参考に示す。)
他社製品情報の入手に関しては、次の順で入手コストや必要とする時間が小さいので、コストの小さい手段をできるだけ
優先して用いて、対象とする他社製品を絞り込んでいくのが、良い。
(1)検索エンジンを用いたインターネットでの検索
(2)新聞記事データベースの検索(有料のものが多い)
(3)カタログの入手(展示会での入手、資料請求による入手など)や販売店や使用場所での現物の目視やヒアリング
での確認
(4)製品の取扱説明書やインストレーションマニュアル(製品購入、製品のレンタル、中古品の購入などによる)
(5)製品の動作テストによる確認
(6)製品の簡単な分解による構造や使用部品の確認
(7)製品の徹底した分析による構造や機能の把握
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