72. 特許リスクにおける小規模事業者優位の法則
A社は売上高年間1兆円の大企業であり、5つの主要な製品を持っているとします。B社は新興のベンチャー企業
であり、製品は1つだけであり、売上高は年間1億円であるとします。大企業のA社は、特許権を1万件保有し
ており、ベンチャー企業であるB社は、最近脚光を浴びている新しい構造の液晶表示装置の特許権を1件だけ保有
しているとします。
これだけを見ると、A社の特許権が圧倒的なパワーを有するように見えます。
ここで、B社の1件の特許権がA社の主力製品である新型液晶テレビをカバーするとします。A社は新型液晶テレ
ビで、年間3000億円の売り上げがあるとします。そして、A社はB社の液晶表示装置をカバーする古い特許権
を100件ほど群として、保有しているとします。
この場合、大企業であるA社はB社に対して支払うべき特許料(実施料および、実施料相当額としての過去の損害
賠償金)は、たとえば3000億円の3%の年間90億円となります。
それに対して、いくらA社の古い特許権100件をB社の新型液晶表示装置に権利行使しても、A社はB社から
、せいぜいB社の年間売上高1億円の10%で、年間1000万円程度しかとれません。
こうみると、特許権の件数でも売上高でも圧倒的に強大なA社がB社に対して、差し引き89億9千万円の支払い
リスクを負っていることになります。
これは、特許戦略において「小規模事業者の方が、特許料の支払いリスクは、大規模事業者よりも圧倒的に小さく
、有利である」ということを意味します。
また、これを応用すると、50億円程度の事業を100分野有する年間売上高5000億円の「中小企業の集合体
のような大企業」は、特許料の支払いリスクが小さいので、特許戦略上は、年間売り上げ1000億円の事業5つ
からなる5000億円企業よりも、特許料支払いリスクが圧倒的に小さくなる。そのため、中小企業の集合体のよ
うな企業は、小さな事業のどれかを捨てる覚悟で、相手にあたれば、特許戦争では圧倒的に有利になる。
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