71. 特許戦争における特許リスク比方程式
自社と相手企業Aが特許戦争をする場合のリスク(特許リスク)の評価値は、支払うことになる金額の大きさとし
て、次のような考え方で算出できる。
(1) 相手企業Aの特許権でカバーされる自社製品の売上高が大きいほど、特許リスクは大きくなる。
(2) 相手企業Aの特許権の権利期間が長いほど、特許リスクは大きくなる。
(3) 自社製品を組み込んだ客先製品が自社製品が原因で他社の特許権を侵害した場合、客先製品についての
侵害責任を負うとしているケースがある場合、相手企業Aの特許権でカバーされる客先製品の売上高が大きいほど、
特許リスクは大きくなる。
(4) 相手企業Aの特許権が侵害発見の困難なものであるほど、特許リスクは小さくなる。
(5) 相手企業Aの特許権の請求項が、理解や製品との対比の困難な内容や構造であるなら、特許リスクは小さ
くなる。
(6) 自社製品の種類が多く、各種類の製品ごとに採用されている技術が異なるならば、大規模な特許リスク
は発生しにくい。
自社の相手企業Aによる特許リスクは、上記の考え方で評価できるので、相手企業Aの特許リスクも同様にして評価できる。
したがって、次のことが言える。
● A社の製品種類数をHAとし、売上高をSA,特許権の件数をPAとする。
B社の製品種類数をHBとし、売上高をSB、特許権の件数をPBとする。
A社の売上高のうちで、B社の特許権にカバーされる割合をrBAとする。
B社の売上高のうりで、A社の特許権にカバーされる割合をrABとする。
ここで、簡単のために、個々の特許権の侵害発見性や理解容易性を無視すると、B社の特許権によるA社の特許リスクを
riskBAとし、A社の特許権によるB社の特許リスクriskABとする。
そうすると、次の式が成立する。
riskBA = SA×rBA
riskAB = SB×rAB
rBAは、B社の特許権の数PBが多いほど大きくなり、A社の製品種類数HAが多いほど小さくなる傾向がある。
rABは、A社の特許権の数PAが多いほど大きくなり、B社の製品種類数HBが多いほど小さくなる傾向がある。
しかし、rBAもrABも割合であるので、最小値が0.0で最大値が1.0までにしかならない。
ここで、A社の特許リスクriskBAと、B社の特許リスクriskABの比を考えると、次のようになる。
(riskBA/riskAB) = (SA/SB)×(rBA/rAB)
この方程式を、特許リスク比方程式と呼ぶ。
したがって、SAがSBの1000倍もあるような状況、すなわちA社が大企業であり、B社が小企業の場合に、
rAB=1.0であると、次のような式となる。
(riskBA/riskAB) = 1000×rBA
この式が意味することは、製品種類数の少ない大企業は、多くの特許権を保有する小企業に対して、特許リスク比の
値が非常に不利になるということである。
大企業は攻撃される的が大きいが、小企業は的が小さいからである。
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