69. 特許戦力の活用の体制
 特許戦力を活用するためには、明確で正当な目的(大義)の存在と、社内関係部門によるその共有が必要である。特に、その大義は社憲および会社の理念に反することもなく、合法的でなければならない。特許権の活用は市場独占を究極の形態とする。市場独占を特許権に基づいて行うことは、法律で認められた正当な行為である。
特許戦力を活用するための資金を社内でどの部門が負担するかや、特許権行使の意思決定を誰が行なうかという事 は、特許戦力活用の体制が小回りのきく体制かどうかを決定する。
しかし、それ以上に重要なのは「特許戦力を活用しようとする意志の大きさ」である。この意志が大きければ、小 回りのきかない体制は、小回りのきく体制に組み替えられることになるし、さまざまな障害があったとしても、そ れを取り除くような行動がなされる。 したがって、「特許戦力を活用しようとする意志の大きさ」こそが、特許戦略での最重要テーマとなる。企業が「 特許戦力を活用しようとする大きな意志」を持つのは、次のような場合である。
自社の事業における主力商品の競争力の要となる技術は、絶対に他社に模倣させないとの強い意志を持ち、この競 争力の要となる技術をカバーする特許権を保有している場合。
表現をかえると、(戦略商品、戦略技術、戦略特許)の組を保有し、事業上で「戦略特許を用いて他社に戦略技術 を模倣させないことによって、戦略商品の圧倒的な競争力を維持する。」との強い意志を持つ事が重要となる。こ の強い意志とは、「相手が自社の商品の顧客であっても、自社よりも特許力が強くても、様々な戦術や戦力を動員 してでも、戦略特許を断固として権利行使する。」との意志である。 特許戦力の活用の意思がある場合、特許権を用いて競合企業を攻撃するには、大きなマンパワーと、決断力が必要 である。従って、特許権による競合企業の攻撃をする場合には、次の事が、重要になる。

(1)特許戦争に必要なマンパワーと資金と特許権の量的・質的な見積もり。
(2)特許戦争の想定スケジュール
(3)相手を降参させるためのキーとなる戦術
(4)訴訟提起を含んだ最終的な強力な手段の行使をするかどうかを決定するための条件と、決定者の特性の見極 め。
(5)特許戦争と事業計画との連携
(6)特許権活用という戦時体制に、特許部門を切り替えて運用する。従って、特許部門の責任者には特許権活用 での戦時体制では何が重要であるかのポイントが、しっかりと理解されていなければならない。戦時体制を組まね ばならない時に、平時の体制そのままを続けていたのでは、まともな戦いはできない。平時にやっていた仕事の中 の短期的な中断であまり悪影響の出ない活動は、そのために使用していた戦力を、相手に対する攻撃のための活動 に組み込まねばならない。


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