56. 新規事業創造をする企業から見た産学連携への期待
新規事業を立ち上げる場合、その事業の市場規模はいつごろまでにどの程度になりそ
うかを見極める
ことが最も重要となります。この市場規模が大きければ、その市場で自社の強みを構
築したり維持でき
るか、自社はどの程度の事業量を確保できそうかということが次に重要な検討項目と
なってきます。
この市場規模を見極めるには、エンドユーザやディーラーの反応をみるために、プロ
トタイプを活用して
のマーケティングの実行が効果的です。
マーケティングの段階での問題は、マーケティング用のプロトタイプの開発を行なう
ための費用、人員の
確保、スケジュールの調整です。この部分が産学連携の活用によって低コストで迅速
でしかも簡単に行
なえれば、さまざまな新規事業の可能性を、具体的な情報を得ながら探ることができ
ます。
これは、企業にとっては新規事業立ち上げの効率化につながりますし、新規事業の成
功確率を増大させ
ます。大学にとっては企業の向こうにある市場が見えてくるとともに、産学連携の
チャンスを増大させます。
新事業のために企業側の構想する商品は、大学の保有する技術をそのまま用いるので
はなく、大学の
保有する技術を商品の重要な構成要素の1つとしたシステムとなる場合がほとんどで
す。
また、商品の段階にまでもっていくには、コストダウンの問題や品質問題、製造やメ
ンテナンスのやりや
すさの観点での改良などさまざまな事柄を解決する必要があります。その意味で、企
業が大学に期待する
ものは、商品の重要な構成要素となる技術の提供とマーケティング段階での連携で
す。
大学の保有する技術が、企業のマーケティング段階において低コストで迅速、簡単に
活用できるためには、
大学の保有する技術を、他の構成要素と組み合わせやすいモジュールとしてまとめて
おき、それを企業に
対してマーケティング用に妥当な料金で一定期間、貸し出すということが必要です。
すなわち、他のシステムと接続しやすいように標準のインタフェースを用い、専門家
による調整がなくても
簡単に動作でき、運搬が簡単であり、壊れにくいような構造をもつモジュールです。
さらには、そのモジュール
の機能説明や操作説明のドキュメントが用意されていることも必要です。
このようなモジュールの貸し出しに関する標準契約書も用意されていて、企業側が
マーケティングのために
このモジュールの貸し出しを受けるための契約交渉に長期間が必要となることがない
ような状況であれば
、マーケティングが迅速に行なえます。
大学側は、産学連携で企業に移転したいと考える技術に、上記のようなモジュールを
用意することで、第1段階
では、モジュールの貸し出し事業を収益を確保しながら行なえます。このモジュール
の貸し出しを受けた企業側
はマーケティング用のプロトタイプを早期に作成して、マーケティングを行い、ター
ゲットとする市場を見極める
ことができます。ターゲットとする市場が見つかれば、企業側は事業化のための予算
確保の意思決定も行なえ、
大学に対して、ライセンスの申し込みや技術指導の申し込み、または共同研究の申し
込みも非常に行ない
やすくなります。
このように、マーケティング用のプロトタイプに活用できるモジュールを大学側が貸し
出し可能に用意するという
ことは、産学連携の呼び水となります。
マーケティング用のプロトタイプに活用できるモジュールを貸し出して、技術移転の
呼び水にして成功している研究開発型ベンチャー企業が米国にあります。
http://www.getradar.com/Index.htm
また、プロトタイプの試作を行なう企業もあります。(2008年9月10日追加)
京都試作センター株式会社
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