44. 子供達の論理的思考力の訓練に、特許請求の範囲の立案は有益
日本の子供達の数学力をはじめとした学力の低下は、人材以外の資源のない日本に
とって、ゆゆしい事態です。
最近では、ゆとり教育が学力低下をもたらしたとして、知識のつめこみ教育への復帰
を唱える人々が増えています。
知識は必要なのですが、知識を自分で探して身につける能力、知識と事実をもとに論
理的な思考をしたり、物事の本質を把握する思考能力の訓練が、知識のつめこみより
も、子供達にはもっと必要と考えます。
知識を使いこなすためには、知識を表現する言葉の概念が明確に把握されていなけれ
ばなりませんし、自分が知っていることと、知らないことの区別ができなければなり
ません。
例えば、「生物」と「無生物」は何が異なるかを説明できなければ、生物という概念
を用いた議論や、生物という概念を用いた特許請求の範囲の立案はできません。炎や
結晶が生物と類似していることを子供達に教えてあげると、びっくりするとともに、
生物とは何だろうと真剣に考える子供も出てきます。日常的に使用している言葉で
も、それの概念や本質を問い詰めると、なかなか奥が深いことを子供達は実感するで
しょう。
用語の概念の本質を、討議や調査で知った後に、概念を組み合わせて、システムの記
述をする段階になると、なぜ、そのような概念の組み合わせで、そのシステムが記述
されるのか、他の概念の組み合わせで、そのシステムの本質を記述できないかという
ことを、子供達がグループ討議をすることで、論理的な思考ができていきますし、論
理的な議論もできていきます。
例えば、身近な装置(例えば、テレビ)を題材に、グループ討議で、その装置の中身
の機能構造を論理的に推理し、それを特許請求の範囲に表現したり、ブロック図で表
現することをさせると、面白い現象が現れるでしょう。
子供のグループごとに全然違ったものとして、テレビの機能構造を把握していること
がわかり、びっくりしたり、新しいテレビの発明をしてしまったグループも現れるで
しょう。議論の中で、子供達は、自分の身の回りの装置を、中身を知らないで使って
いることを自覚するでしょう。
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