45. 標準仕様提示権と標準策定参加権という新しい特許権の形
特許権者にとって、独占排他権としての特許権には満足できない部分があります。独占排他権は競合企業を市場から排除するのですが、
市場を立ち上げたり、市場を拡大するという効果がないというのが不満です。特許技術を用いた新事業を企画し、事業を立ち上げる場合、
特許権者に特許発明を用いた公的な標準仕様を提示し、標準策定に参加する権利が与えられるのであれば、標準の持つ市場拡大効果を、
自社の事業戦略の中に組み込めるので、特許権者にとって、特許権に新事業立ち上げにおけるメリットを感じることができます。
また、特許権者が公的な標準仕様を提示し、標準策定に参加するのであれば、特許問題のために標準仕様の策定が遅れるとか、標準仕様を
定めても特許問題のために標準仕様が普及しないという問題も発生しなくなります。特許権者も、特許発明を用いた製品分野の拡大を狙うわけですので、特許発明の使用
に関して差し止め権を放棄し、実施料を無料とするか、実施料を非常に低額にすることを特許原簿に記載し、標準仕様提示権を得ることを選
ぶという場合も多発するでしょう。標準仕様を提示しても、それが採用されなければ特許権者にとっては意味がないの
で、採用されない場合には、差し止め権の放棄や実施料を無料とするなどのことは、一定の条件のもとで、取り消すことも可能にする必要も
あるでしょう。
現在の特許制度は、特許権者に独占排他権を与えることで、発明者に利益を与え、発明を奨励して産業を発達させようとしています。
しかし、独占排他権を与えても、市場が立ち上がらねば、発明者には利益はもたらされず、発明も奨励できず、産業も発達しません。
それに対して、標準仕様提示権と標準策定参加権を特許権者が得ると、標準仕様という市場立ち上げパワーを特許権者が利用できるので、
市場の立ち上げの中で、発明者も事業利益を得られ、発明が奨励され、産業も発達します。
特許権者が、独占排他権を選んでも良いし、標準仕様提示権と標準策定参加権を選んでも良いという特許制度への変革が望まれるところです。
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