362. 目利き能力者のネットワークが日本国の成長戦略を現実化する
アベノミクスの第3の矢と言われる「成長戦略」の実現のためには、新産業の創出や、既存産業の生産性の革新的な向上が必要である。
それらのためには、さまざまなイノベーション創造が必須である。
イノベーションは、技術やビジネスの新結合であり、その結合をもたらすためには、価値創造を目指した新たなアイデアや発明をもとにして、
人や企業や組織の新たな出会いと結合が必要となる。
目利き能力者は、アイデアや発明の創出をしたり、人や企業組織の新たな組み合わせ結合を発想できる人材であり、イノベーションの主役である。
目利き能力者は、ほんの小さな動きやかすかな芽生えから、新たな技術の可能性や、新たなビジネスや産業の可能性や、新たな提携の可能性などを
見抜いたり、発想したりを即座にできる人物である。
そのような人物が目利き能力を有している原因は、その人物は、その関心分野とその周辺領域や関連領域について、物事を深く広く考え続けているので、
その関心事に関連した要素の様々な組み合わせパターンの記憶が脳内に多数存在しているからだと思われる。
そのような組み合わせパターンの1つのパターンの構成部分にあてはまる要素が情報として入ると、即座にその1つの組み合わせパターンが起動され、
その組み合わせパターンの他の構成部分の探索が行なわれ、対応する実体を思い出して、組み合わせパターンを現実化させるのである。
このような目利き能力者がその能力を十分に発揮すれば、新産業の創出や既存産業の生産性の革新的な向上が短期間のうちに実現でき、
アベノミクスの「成長戦略」は容易に継続的に実現できる。
しかし、目利き能力者は、組織内の「非目利き者の壁」に囲まれて、身動きがとれないために、たいていの組織において、
目利き能力者はその能力がほとんど発揮できないままとなっている。
目利き能力者は、イノベーション人材であり、非目利き者はオペレーション人材である。
企業でも国家でも、新たな組織はイノベーション人材が集まって新規な価値創造のために形成するものであるが、組織が拡大し安定するにつれてオペレーション人材
が多数派(オペレーション派)を形成し、組織としてのイノベーション能力が喪失していく。
オペレーション派は、明確に確立している業務を、既存組織の中でマニュアルと責任権限規定にしたがって、短期間のサイクルで決めた実行計画と予算計画にしたがって
論理的に確実に実行しようとする。
また、オペレーション派は、自分の身の回りに現実に存在している事しか見えないし、いますぐに自分に利害関係のある範囲のことにしか関心がない。
そのため、イノベーション人材である目利き能力者の言動は、非目利き者であるオペレーション派からみると、非現実的で価値の無い意味のわからない事のように思える。
創成期をすぎて、安定期や成熟期や衰退期に入っている企業や団体などでは、オペレーション派が経営資源の支配権を握っている。
そのため、そのような組織内に目利き能力者(イノベーション人材)がいても、たいていは「非目利き者の壁」に阻まれて、
目利き能力者には経営資源をほとんど割り当てられることもなく、外部への情報発信をすることもできず、まるで座敷牢の中で朽ち果てるというような状況となる。
これが、日本全国の多数の企業や団体の中で現実に発生していることであり、いくら資金をそろえても制度を設定しても、なかなか日本国でイノベーションがおきなくなった
原因である。
これを打破するには、「非目利き者の壁」の中から目利き能力者(イノベーション人材)を救い出し、目利き能力者がネットワークを組んで、
技術やビジネスの新結合のパターンを現実化できるように、日本国政府が支援することが効果的である。
具体的には、次のとおり。
(1) 基本特許の単独発明者や、世界初の新たな種類のビジネスを創業した創業者や、多数の引用を受ける新規なアイデアの入った論文の著者を、
目利き能力者(イノベーション人材)として、日本国政府が抽出してイノベーション戦略のための目利き能力者名簿に登録する。
(2) 目利き能力者名簿に登録された目利き能力者が集まって、日本国の成長戦略のための技術開発や産業創造や制度改定などの成長戦略を立案する。
(3) 上記(2)で形成された成長戦略に国家予算を十分につけるとともに、必要な技術開発を国の研究機関を中心とした体制で実行する。
(4) (3)の活動の成果を活用した新規事業創造に、(1)の目利き能力者(イノベーション人材)の所属組織が一定条件のもとで優先的に参加
できるようにする。他の組織も参加できるようにする。
日本国の成長戦略のためには、目利き能力者を非目利き者の壁の中から救い出し、目利き能力者のネットワークを形成し、そのネットワークに日本国の成長戦略の立案と
実行を託すことが必要なのである。
一般的に言って、法学部の出身者は前例踏襲・横並びの価値観を柱としており、オペレーション派の典型である。
日本国の戦略部門である経済産業省や国土交通省や総務省や防衛省や財務省の幹部の多数派を法学部卒業生が占めることは、日本国の成長戦略を大きく阻害する基本構造となっている。
非目利き者(オペレーション派)に成長戦略を託していたのでは、いつまでたっても日本は衰退軌道から抜け出せない。
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