Patent Island

３６１．オペレーションは線形制御の活動、イノベーションは問題分割による線形制御化の活動

オペレーションは、問題の存在する状態空間に存在する特異点を回避するように、状態空間が分割されて生じた部分空間ごとの線形制御の組み合わせで問題解決できるように問題が構造化され、問題解決策も体系化済みの場合に適用できるものである。

これは、料理のレシピや手順や料理の工程ごとのパラメータが明らかになっているならば、投入する材料や工数に比例した量の料理を誰でも生産できるようになっているという状況である。
この料理の工程やパラメータの切り替えのタイミングは、特異点回避のタイミングであるとも言える。

イノベーションは、問題が存在する状態空間の軸も構造も未知であり、特異点の存在の有無や位置や性質も未知であり、その結果、どのように状態空間を分割すれば特異点を回避した線形制御可能な部分空間の組み合わせになるかも判らないところから開始する活動である。
しかし、イノベーションを起こそうという志が生じるのは、ぼんやりとだが状態空間の軸や大変に価値ある位置のイメージを獲得できた目利き者がいる場合である。イノベータは、その志と目利き能力に駆動された試行錯誤や洞察の繰り返しや、他の分野からの知見の導入などをもとに、問題が存在する状態空間の軸や構造や特異点を回避した状態空間の分割の方法を編み出し、問題解決策を線形制御の組み合わせに体系化していくのである。

目標を定量的に設定して、ＰＤＣＡサイクルを回して目標を達成するというマネジメント方法は、オペレーション業務には適用できるが、イノベーションには原理的に適用不可能である。なぜならば、イノベーションでは目標を定量的に表現できない状態空間を取り扱っているからである。
したがって、一定期間ごとに目標達成を求める目標管理制度は、イノベーションの阻害要因にしかならないのは明白である。

イノベーションを促進したいのであれば、問題が存在する状態空間を簡単に安全に効率的に観測したり体験できる環境を整備することや、状態空間を記述するための軸設定や特異点の存在の仮説の設定に役立つかもしれない知見を有する多様な人の出会いの場を設定することが重要である。

イノベーションは不確実性との闘いの探索活動なので、多様な観点での多様な試みを素早くローコストにできるようにすることがキーポイントだからである。

オペレーションとイノベーションとでは価値観が完全に異なる。

オペレーションは、問題が存在する状態空間での特異点を回避して、安定的で効率的な活動を繰り返すことを目指す。
イノベーションは、問題が存在する状態空間での特異点を発見して、その位置や性質を知り、特異点を回避しながら問題解決をするための軸設定や状態空間の分割方法を得ようとする。

イノベーション創造を望む者は、上記の事を深く認識することが重要である。

オペレーションの価値観と論理でイノベーションを語る者は、イノベーションを阻害する者であることを自覚することが必要である。
オペレーションが可能なのは、過去にイノベータが苦労の末に、オペレーション可能なように問題解決策を構築したからであるとの認識をオペレーション派は持たねばならない。