34. 知的財産マネージメントの広がり
知的財産は知的創作活動から生まれた独創的な成果を示す情報です。知的財産には、発明,知識情報,著作物,ノウハ
ウ,デザインなどがあります。この知的財産を社会の発展や人々の幸福のために継続的に活用するため、知的財産に関
する活動を最適化する行為が知的財産マネージメントです。
知的財産マネージメントとして、知的財産権を主張する方向と、主張しない方向があります。
知的財産を法的権利によって保護することで、知的創作活動を行なう人の利益を確保して、知的創作活動を促進しよう
というのが知的財産権を主張する方向の知的財産マネージメントです。
しかし、知的財産を社会の発展や人々の幸福のために継続的に活用するという大目的からすると、知的財産権を獲得せ
ず、獲得しても行使しないという方向もあります。例えば、パブリックドメインソフトウェアがあります。これは、ソフトウェ
ア開発の世界で良いコンピュータプログラムを自由に使いあって、楽しく、しかも開発効率を上げていこうということ
で、著作者が著作権を放棄するか、権利主張をしないことを宣言したコンピュータプログラムです。また、Linuxの成
功で一躍有名になったオープンソースというものもあります。これは、コンピュータプログラムのソースコードを公開し
、しかもインターネットを通じて世界中のソフトウェア技術者が無償で、ソースコードが公開されたコンピュータプロ
グラムを進歩させていき、無償で使用できるようにするというものです。これは、知的財産権を主張しないことで、多
くの人に知的財産を普及させ、多くの人々の力でそれを急速に向上させようというものです。
また、企業の事業戦略に基づいて、あえて特定のコンピュータプログラムを無償で配布し、そのコンピュータプログラム
のユーザを急激に増大させた上で、そのコンピュータプログラムに関連したサービスの事業で収益をあげようとか、その
コンピュータプログラムの上位版や関連したソフトウェアやコンテンツで事業収益をあげようというものもあります。
また、知的財産の1つである知識情報には、人間が創作し人間または機械が使用するものもありますが、機械が創作して
機械または人間が使用するものもあります。これらの知識情報は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、
学術、美術又は音楽に属するものとの著作物の定義にも該当しないものも含まれます。
知識情報を自動的に合成して、新しい知識情報を生成するということも、知的財産マネージメントの範囲にはいりますし、
知識情報を用いて観測データを適切に処理して、高い付加価値のある情報を得るということも知的財産マネージメントの
範囲に入ります。この分野の知的財産マネージメントに求められるものは、知的財産である知識情報の品質管理,価格付け,
データフォーマットの標準化と新技術の取り込み,知識情報の仕入れや生産があります。
発明に関しては、請求項記述言語による記述によって、発明を知識情報化するということも、知的財産マネージメントの
大きな分野となることでしょう。
また、知的財産を創作する人間の発想を支援する発想支援システム(例:
TRIZ),人間の創作活動を促進する価値観の変革も、知的財産マネージメントの大きな分野となります。
さらには、知的財産を世の中に普及させるために必要となることの多い「標準化」を、いかに行なうかということも、知的
財産マネージメントには必要です。このように、知的財産マネージメントは、知的財産権のマネージメントを包含するが、
それをはるかに越えた広い範囲のものとなります。知的財産マネージメントは、新しい分野であり、今後の急速な発展が
望まれる重要な分野であると考えます。
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