33. 知的財産の普及パワーと、知的財産権による普及阻止パワーのバランス
広く普及しようとするパワーを内在した知的財産の普及を阻止する排他権が知的財産権である。
普及しようとするパワーを持たない知的財産の知的財産権には価値がない。
知的財産の普及パワーと、知的財産権による普及阻止パワーを均衡させることで、産業や文化を発達させることが、
知的財産権制度の構造である。
知的財産である発明、著作物などがデジタルデータとして表現され、インターネットを通じてコピーが簡単にできるよ
うになったので、知的財産の普及のパワーは大幅に増大している。これに対して、知的財産の普及を阻止する排他権
の行使のパワーの増大は遅々として進んでいない。特許法196条では、特許侵害罪の規定をおき、「特許権又は専用
実施権を侵害した者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。」としている。著作権法119条では、「
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。」としている。しかし、知的財産権を侵害しているかどうかの判断は困難であり、時間もかかることもあって、知的財産権
の行使や告訴は、体制のととのった組織でなければなかなかできる事ではないのが、実態である。
すなわち、知的財産権による普及阻止パワーが、知的財産の普及パワーの増大に追いついていないのである。
知的財産権による普及阻止パワーを増大させる方法が見出されなければ、知的財産権を行使されることは滅多にない事、
例えば、隕石にぶつかられるようなものとなる。
根本的で革新的な解決策がなければ、この状況は変わっていかないだろう。変わらなければ、知的財産権は有名無実化し、
知的財産の創作者の創作意欲は減退していくだろう。解決策となるかもしれないものに、IDタグの普及とIPv6があ
る。
全ての製品にIDタグが付けられ、全ての製品とサービスに、その製品とサービスの内容を説明するWebページを
設けることが義務付けられるようになり、そのWebページの記述から見て知的財産権を侵害していると一応の合理的な
説明がつく場合には、侵害しないことの反証がないかぎり、侵害するとして国が決めた一定の低額の実施料を支払わねば
ならないという制度ができれば、知的財産権のパワーが大幅に増大すると考える。
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