288.前工程、後工程、並行工程と上位工程との調整完了後にしか行動しない人々
自分の役割とする工程というものは、工場における生産ラインでなくても、オフィスでの各種の業務(企画業務、知的財産業務など)であっても存在する。
完全に定型化されたルーチンワークではなく、何らかの不確定性に挑戦しながら新たな価値を創造しようとする要素のある業務の中の工程の場合、
その前工程、後工程、並行工程、上位工程というような自分の周囲の全工程との調整が完全終了していなければ、自分が担当する工程に関しては工程構築を
しないという行動原理では、工程間のデッドロックで業務組織の構築ができない。
業務組織の構築が何らかの方法でできたとしても、自分の担当する工程の前工程が自工程に必要な材料を準備完了していなければ自工程は準備作業も含めて
何の動作も開始しないとか、自工程の生産物の受け取り準備動作を後工程が完了していなければ、自工程は準備作業も含めて何の動作も開始しないという
行動原理では、業務組織は工程間のデッドロックで動作停止してしまう。
また、並行工程や前後の工程との役割の重複が無いように役割分担が完全に調整完了していないと工程構築も工程の動作もしないという行動原理では、不確定性に
チャレンジしながら新たな価値を創造しようとする要素のある業務は実行できない。不確定性のために役割の厳密な定義や工程間の界面の厳密な設定はできないためである。
さらには、前工程と後工程との調整も完了していて、前工程では自工程に必要な材料の提供はできており、後工程は自工程の生産物の受け取り準備ができて
いても、上位工程による自工程に対する評価基準が明示されていなければ、自工程は動作しないという行動原理では、業務全体を試行錯誤の中で工夫しながら
形成して、不確定性に挑戦して新たな価値を創造するという事はできない。
自工程だけは不確定性に伴う各種のリスクを負わず、周りの工程にリスクを負ってもらおうという行動原理を採用していると、上記のようなデッドロック
に陥る。そして、リスクの押し付け合いを本質とする相互調整という会議が延々と繰り返されるが、全体としては何の解決もせず、時間と各種資源が無駄になる
ばかりである。そうこうしているうちに、自工程は行動することによるリスクを負わず、他の工程にリスクを押し付けることから発生する嫌われるというリスクも負わない
ようにするために、自工程も他の工程も含めて業務全体が実行困難であるという理由を探して、それらの理由が解消するまでは全工程で何もしないという状態を
形成しようという動きが発生する。
そうなると、全工程が何もしないで業務全体が停止した中で、どの工程も何もせず、リスクも負わず、他にリスクも押し付けずに仮死状態になり、時間が経過して
緩慢な死が訪れて、全工程が消滅して終わりとなる。
特許戦略メモに戻る 前ページ 次ページ
(C) Copyright 2010 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved
戦略のイメージに合うフリー素材の動画gifを、http://www.atjp.net からダウンロードして活用しています。