258.知財業界人が陥りがちの法律依存症と思考停止症

発明とは何ですか?」 と問われたときの回答として、例えば、「発明とは技術者の夢と汗の結晶です」という回答もあり得ますし、「発明とは文明という巨大建造物を構成する部品です」と いう回答もあり得ます。
さらには、発明の創作過程に注目した場合には、「発明とは、脳の有する自己組織化機能が作動することで、目的機能をシミュレーションするために脳内に発生する一時的な情報処理システムを、脳内の他の部分が認識することで、目的機 能の実現方法を言語表現したものである。」という回答もあり得ます。

しかし、「発明とは何ですか?」と問われて、特許法第2条1項での発明の定義を復唱するだけにとどまっている知財業界人は、知らず知らずに法律依存症または思考停止症に陥っている と思います。
発明とは何かを、自分の頭で考えていないので、発明を特許法上の定義の範囲だけでしか把握できず、発明は特許法上の概念であると勘違いしているのです。その結果、「特許法上における 発明の概念とは?」とたずねられてもいないのに、特許法上の発明の概念だけを説明していて、自分自身で違和感を持たないようになっているのです。
そのような人は、技術開発の現場での苦労や、発明を生み出す人が発明にこめた思いを想像できないようになりがちです。
すなわち、発明の概念に限らず、何でも法律の条文や青本に書かれた定義と趣旨を中心に発想してしまうので、現実の事業や技術開発の目的や状態を理解できなくなるのです。
そして、自分から概念を構築したり、仮説設定と検証を行ないながら、新たな分野を切り開いたりすることを回避するような思考と行動のパターンとなるのです。
特に、長い年月を受験勉強に費やした知財業界人にこの傾向が顕著になりますが、そのような本人はそれに気付かないことが多くなります。

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