257.顧客価値実現とコア技術の関係

イノベーションの実現のためにも、特許戦略の実践のためにも、「顧客価値」と「コア技術」の両方が重要である。すなわち、次のようになる。

@新しい顧客価値を創造して市場拡大するためには、コア技術を活用できる事業領域で計画的に顧客ニーズの変化を予測して新しい価値を創造する戦略が有効である。
A顧客の立場で考え、将来有望なニーズを汲み取り、自社のコア技術でその希望を叶える。
B顧客価値は、【潜在的顧客価値】から【仮想的顧客価値】に至り、最後に【顕在的顧客価値】に到達するというプロセスをたどる。このプロセスは不確定性の中での 組織活動を必要とするものであり、不確定性の大きい初期段階での予測や洞察が特に重要となる。すなわち、不確定性に挑戦するために予測能力や洞察能力を組織全体が重視し、 鍛えることが継続的にイノベーションを実現するために必須である。これは、発明の本質抽出能力の鍛錬とも共通する。 逆に言うと、不確定性への挑戦を避け、前例踏襲・横並びを重視したり規則や方針のみを重視して洞察や予測を行なわない法律家的発想に陥らないことが必須である。

1. 予測の重要性
参考サイト6では、次のような知見を獲得したとしている。

新しい顧客価値を創造して市場拡大するためには、コア技術を活用できる事業領域で計画的に顧客ニーズの変化を予測して新しい価値を創造する戦略が有効であることが分かった。
そして、この知見は次の仮説に基づいた検証活動によって得られたとのことである。

【仮説】
「これまでに市場になかったお客様が喜ぶ価値」(=新しい顧客価値)を生み出し、市場を拡大するためには、「新しい『顧客価値』の予測」が重要であり、その為には

1)社会の変化を予測している
2)既存市場での顧客のニーズを把握している
3)自社のコア技術を把握している
が有効である。

これらの知見および仮説の中での最重要なキーワードは、「予測」である。予測は、過去および現在の状態に対して何らかの法則(不確定性を含む法則)と想像を加えて実行するもので あると考える。

2. 洞察の重要性
参考サイト8では、「製品アイデアを直接に顧客に求めるマーケットイン」は駄目であるし、「顧客を良く知らないまま目新しさを追求してしまうプロダクトアウト」も駄目であると している。そして、「顧客の立場で考え、将来有望なニーズを汲み取り、自社のコア技術でその希望を叶える」というマーケットインとプロダクトアウトの結合こそが大事であり、 そのためには洞察が重要であると強調している。
参考サイト7においても、コア技術戦略は「プロダクトアウト+顧客ニーズ創造」であり、「顧客が欲しいものではなく、喜んでもらえるものを提供」としている。

参考サイト7では、コア技術戦略のポイントを、次のように示している。

コア技術戦略のポイント
.. コア技術への戦略的な集中と長期的視点
.. コア技術を活用した商品戦略の徹底:プロダクトアウト
.. コア技術を次々に事業化するための商品コンセプト創造力
.. コア技術と周辺技術を結合する組織の仕組み
.. コア技術を継続的・長期的にメインテナンスする仕組み(新規構築と入れ替えなど) 
.. コア技術への集中戦略とリスク

3. ニーズ具体化軸とシーズ具体化軸で張られる平面上での軌道で示される顧客価値創造プロセス

参考サイト1では、ニーズ具体化軸(潜在ニーズ→仮想ニーズ→顕在ニーズ)とシーズ具体化軸(潜在シーズ→仮想シーズ→顕在シーズ)で張られる平面上での軌道として、 ニーズとシーズの融合と顧客価値創造の構造化プロセスモデルを示している。
すなわち、この平面上では、顧客価値創造の構造化プロセスは、【潜在的顧客価値】の状態から【ビジョン】の状態に移行し、さらに【製品コンセプト】に移行し、 さらに【モデル】に移行し、そこから【製品】において、【顕在的顧客価値】に到達するとしている。
そして、【潜在的顧客価値】の状態は、シーズの具体化度が潜在シーズのレベルであるか又はニーズの具体化度が潜在ニーズのレベルである状態である広い範囲の状態である としている。また、顧客価値は、【潜在的顧客価値】から【仮想的顧客価値】に至り、最後に【顕在的顧客価値】に到達するとしている。 潜在的顧客価値には、諦めている顧客価値と、気付いていない顧客価値の2種類があるともしている。

【参考サイト】
1. 製品イノベーションにおける、ニーズとシーズの融合と顧客価値創造のメカニズムの研究
2. 顧客価値の概念と本質
3. 顧客価値創造型商品開発(1)
4. 顧客価値創造型商品開発(2)
5. 顧客価値創造型商品開発(3)
6. 企業成長のための「顧客価値創造」戦略
7. 付加価値創造のための製品開発:高収益企業の戦略パターン
8. 2つのモノづくり

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