17. 特許マネージメントの目的と発展の段階
企業経営の立場からみて、特許マネージメントに期待するものは、事業利益への貢献と経営体質向上への貢献
です。
より、具体的には、自社が切り拓いた新事業領域への他社参入の阻止、顧客獲得への貢献、実施料の
獲得、独創的な発明や本質を追求する気風の醸成、戦略思考のできる人材の育成です。
これらのことは、発明を数多く出せばできるというものではありません。数多くの発明を質を問わず出すという段階
も、その企業の発展段階の初期には必要ですが、その段階ににとどまっていると、退歩が始まり、良い発明が社員か
ら出ない状況に戻ってしまいます。なぜならば、事業貢献に結びつかない発明ばかりを出していると、発明をする
ことは無意味で時間の浪費であるという価値観が組織に定着してしまうからです。
ここまでの劣悪な状況に陥らないまでも、発明を改善提案の一種として位置づけるレベルにまで特許マネージメント
がレベルダウンしてしまっている企業も多々あります。
発明が長年にわたって戦略レベルの事業貢献していなかった場合には、このような状況になりがちで
す。
多数の発明を特許出願していると、中にはすばらしい発明も出てくることがあります。
しかし、基本特許といえるものになる発明がどれであるのかという認識を持たないで、ルーチンワーク
として、発明を処理するような特許マネージメントをやっていると、技術開発部門も発明を単なる
ルーチンワークの一貫としてしかみないようになりますし、当の知財部門も大量の発明を右から左に流す
だけのルーチンワークをこなすだけになります。
こうなってしまうと、特許マネージメントに経営が期待していた成果は何も出ないというようになりま
す。
基本特許となりえる発明を、知財部門が抽出し、基本特許となりえる発明を頻繁に発想できる優秀発明
者は誰であるかを認識し、良い発明を見抜く眼と、技術と事業との関係を見抜く眼を持った技術開発リ
ーダや事業企画リーダは誰であるのかを把握しておくことが、特許マネージメントを発展させていく上
でのキーポイントです。
このキーポイントなしで特許出願件数を増加させたり、知財部門の量的拡大をしても、結局は経営資源
を消費しているのに、成果がでないということになり、早晩、特許マネージメントのレベルは退歩して
しまいます。
特許マネージメントにおける選択と集中が行なうためには、基本特許に注力することが重要です。
さらに発展していけば、基本特許となる発明を抽出するという段階から、基本特許となる発明を意識的
に創作していくという段階に到達していきます。
そして、さらにレベルアップすると技術と事業の螺旋状の発展のストーリを予測し、その予測を自らの
活動で実現していく戦略を企画し、実行するレベルに到達できます。
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