144.PCMLで記述された請求項から自動生成されるXMLタグで明細書を構造化する

構造化と記述というものに関して考察していて、良いアイデアを考え付きましたの で、お知らせします。特許制度の立場からだけでなく、設計論の立場や意味論の立場 などからも、このアイデアにコメントをいただければと思います。

● まず、構造化と記述というものについて説明します。

構造化というものでは、意味をコンピュータが理解できるレベルまでの表現でなくて も良くて、構造化対象の情報をいくつかに区分けして、区分されたそれぞれにラベル を付与しておくということだと思います。そして、この場合のラベルは必ずしも意味 が概念辞書で定義されている必要はありません。

記述というものは、意味をコンピュータが理解できるレベルまでの表現でなければな らず、記述対象の情報を区分してラベルを付与するだけでなく、区分された情報の間 の関係についてもラベル付けして表現するとともに、ラベル自身の意味定義を概念辞 書で与えておくというものだと思います。

●請求項記述言語と、明細書構造化言語の性質について説明します。

請求項は構成要素とリンクからなる階層的グラフ構造でモデル化できるので、それを 請求項記述言語で記述することが可能となります。明細書は自由度が高すぎて、モデ ル化ができない状況ですが、明細書の中身をいくつかの領域に区分して構造化するこ とは可能であり、明細書を構造化することで大きな価値が生まれます。

請求項記述言語で記述された請求項の間では、グラフマッチングを用いて包含関係や 一致関係の検出が可能となります。
しかし、明細書構造化言語で記述された明細書の間では包含関係や一致関係の検出は できません。

包含関係や一致関係の検出ができるかどうかという事は、技術的には大変に大きな違 いになります。

絵画の世界で例えて言えば、構造化された絵画は領域ごとに色分けして描かれた塗り 絵のようなものですが、記述された絵画とはコンピュータグラフィックス技術を用い た図形表現であり、さまざまな角度から見た絵画を自動生成できます。

●請求項記述言語と明細書構造化言語の関係についてのアイデアを説明します。

明細書構造化言語としては、請求項記述言語で記述された請求項に基づいて、明細書 を構造化することが良いと思います。
すなわち、トップダウン設計の考え方を用いた明細書を実現するということです。こ の考え方は、ソフトウェアエンジニアリングにおけるソフトウェア設計の方法論とも 整合しますので、谷川さんの創始された特許工学にも適うものだと考えます。
言い換えると、請求項記述言語で発明をコンピュータにも理解できるものとして概念 設計します。概念設計された請求項に基づいて、明細書を詳細設計するというわけで す。
具体的には、明細書構造化のプロセスで用いられるXMLタグは、請求項記述言語で 記述された請求項の情報から自動生成すれば良いのです。そうすると、請求項と明細 書の対応付けができ、明細書の記述でサポートされた請求項となります。
このコンセプトを用いると、高品質で読みやすい明細書ができます。

【参考サイト】
1. 請求項記述言語(PCML)
2. 特許情報のXML化動向

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