Patent Island

１２８．　特許侵害リスクマトリックス

事業のプロセスから見た場合、Ｘ社の製品には、企画段階、開発段階、生産段階、販売段階、顧客での使用段階というステータスがある。
また、Ｘ社にとってリスクのあるＹ社の特許には、未公開段階、権利範囲の拡大変更可能段階、特許権維持段階、というステータスがある。
特許侵害リスクマトリックスとは、下表に示すようにＸ社の製品のステータスとＹ社の特許のステータスの組み合わせからなるマトリックスである。
特許侵害リスクマトリックスという概念を正しく認識することで、特許戦争における攻撃のチャンスや攻撃されるリスクがどのような構造であるかが明確にわかるようになる。
●　特許侵害リスクマトリックスにおいて、Ａ４１，Ａ４２，Ａ５１，Ａ５２の領域は、Ｙ社がＸ社の製品の技術内容を把握した上で請求項を拡大変更などをしてＸ社の製品をカバーする特許権に加工することが可能な領域である。
●　そして、特にＡ４１，Ａ５１の領域ではＹ社はＸ社に気付かれることなく、Ｘ社の製品をカバーする特許権に加工して権利行使の準備をすることが可能である。
●　Ａ１２，Ａ２２，Ａ１３，Ａ２３の領域は、Ｘ社がＹ社に気付かれることなく、Ｙ社の特許の請求項の侵害回避をすることが可能な領域である。
●　そして、特にＡ１３，Ａ２３の領域では、Ｙ社の特許権の拡大変更の可能性がないので、侵害回避が行ないやすく、侵害リスクの不確定性が非常に小さな領域である。
●　未公開段階の特許や、請求項の拡大変更の可能な特許が存在している段階では、非侵害の保証などをすることは現実的ではないことが明確に判る。

【特許侵害リスクマトリックス】

Ｘ社の製品のステータス＼Ｙ社の特許のステータス	未公開段階	権利範囲の拡大変更可能段階	特許権維持段階
企画段階	Ａ１１	Ａ１２	Ａ１３
開発段階	Ａ２１	Ａ２２	Ａ２３
生産段階	Ａ３１	Ａ３２	Ａ３３
販売段階	Ａ４１	Ａ４２	Ａ４３
顧客での使用段階	Ａ５１	Ａ５２	Ａ５３

【特許侵害リスクマトリックスの各領域の説明】

Ａ１１：Ｘ社もＹ社も相手の活動を検知できない。
Ａ２１：Ｘ社もＹ社も相手の活動を検知できない。
Ａ３１：Ｘ社もＹ社も相手の活動を検知できない。
Ａ４１：Ｘ社はＹ社の特許を検知できないが、Ｙ社はＸ社の製品を検知してＸ社の製品に対する権利行使の準備を開始できる。
Ａ５１：Ｘ社はＹ社の特許を検知できないが、Ｙ社はＸ社の製品を検知してＸ社の製品に対する権利行使の準備を開始できる。

Ａ１２：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように企画が可能であるが、請求項が拡大変更されて侵害回避できない可能性も残る。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ２２：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように開発が可能であるが、企画段階よりもそれは困難である。また、請求項が拡大変更されて侵害回避できない可能性も残る。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ３２：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように生産が可能であるが、開発段階よりもそれは困難である。また、請求項が拡大変更されて侵害回避できない可能性も残る。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ４２：Ｘ社はＹ社の特許を検知できるが、もし侵害していた場合には、もはや販売中止以外の手段では侵害回避できない。また、販売段階で侵害していないものであったとしても、請求項が拡大変更されて侵害となる可能性もある。
Ｙ社は、Ｘ社による販売品をカバーするように自社の特許の請求項を拡大変更することも可能である。
Ａ５２：Ｘ社はＹ社の特許を検知できるが、もし侵害していた場合には、もはや販売中止以外の手段では侵害回避できない。また、販売段階で侵害していないものであったとしても、請求項が拡大変更されて侵害となる可能性もある。
Ｙ社は、Ｘ社による販売品をカバーするように自社の特許の請求項を拡大変更することも可能である。

Ａ１３：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように企画が可能である。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ２３：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように開発が可能であるが、企画段階よりもそれは困難である。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ３３：Ｘ社はＹ社の特許を検知して、Ｙ社の特許を回避するように生産が可能であるが、開発段階よりもそれは困難である。Ｙ社はＸ社の製品を検知できない。
Ａ４３：Ｘ社はＹ社の特許を検知できるが、もし侵害していた場合には、もはや販売中止以外の手段では侵害回避できない。
Ａ５３：Ｘ社はＹ社の特許を検知できるが、もし侵害していた場合には、もはや販売中止以外の手段では侵害回避できない。