127. 知財立国の基盤である人材の問題発見能力と問題解決能力を蝕むマニュアル化と過剰管理

最近、コンビニエンスストアの店員は「いらっしゃいませ」、「またお越しくださいませ」と、無表情に作業 しながら、客の顔も見ないで繰り返して声を出しています。
これほどではなくても、あらゆる職場でマニュアル化やドキュメント化という方式が進行し、さまざまな種類の ISO認証の取得が増加しています。
一定レベル以上の管理水準にあることを示すためや、問題が発生したときの責任負担の軽減のためというのが マニュアル化進行の原動力です。 しかし、これは日本における非正規雇用者の増大、様々な分野での現場ノウハウを蓄えた団塊世代の大量退職 、中国との競争による過度なコストダウンによる企業の知的蓄積の崩壊、 ゆとり教育によって低下した学力のまま社会人になった若者の増大という要因と一緒になって、 日本のあらゆる分野で、現場における問題発見能力、問題解決能力の著しい低下をもたらしています。
例えば、研究開発や営業や生産のの現場では、活動のプロセスをあまりにも詳細に決め、プロセスの各段階で さまざまなドキュメントの提出とさまざまな会議でのチェックを受けるという体制にしてしまったがため 、本質的な問題にチャレンジせず、チェックを通りやすいドキュメントをまとめることや、会議の期日までに 得られる情報だけで見栄えの良いプレゼンテーション資料を作成し、会議の場で本質的な問題に気付いて指摘 されることをうまく回避するように会議の議事進行を図るということも行なわれるようになります。
すなわち、組織のパワーを越えた過剰管理が仕事の質を劣化させるという現象が発生しているのだと思います。
マスコミも、何か事故が発生したら、そのような事故が発生したときの対応マニュアルはあったのかとか、 点検マニュアルはあったのかということを追求する傾向が強くなっており、事故の実際の状況、そのような状況の 発生した原因の解明をマスコミもしないようになってきています。もしかすると、マスコミの取材マニュアル の影響かもしれません。
問題発見、問題解決、本質的な事項の追求という本質仕事に注力する時間を増加させることができるように、 プロセス管理のためのドキュメント作成やチェックやレビューの負担軽減や負担ゼロを可能とするITシステム が必要だと思います。
このような工夫なしに、マニュアル化と過剰管理を進行させていると、付加価値の源泉である知的能力がどんどんと 劣化していき、単に認証機関や社内の監査部門だけが生き生きとしている状況になってしまいます。
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