5. 意味の実現原理と発明原理
発明の原理を述べる前に、「意味」の実現原理を述べる。
「意味」の実現原理:
言葉であってもパターンであっても、それらについて意味処理することのできる情報処理系では、その情報
処理系の内部で情報処理の内容をコントロールするとともに、情報処理の結果として発生する「ある種の量
の分布」である「場」を持つと考えます。この場を感性場と呼びます。
言い換えると、感性場は、情報処理をコントロールする信号の分布です。パターン認識機能と連想機能を有
する自己組織系における感性場が、「意味」というものを実現しているというのが、私の結論です。
犬の画像パターンを視覚で受容することで発生する感性場と、犬という言葉の入力を受けて発生する感性場
が同じであれば、犬の画像パターンも、犬という言葉も同じ意味を有するというように考えます。
同じ意味を有するとは、「内部に同じ感性場を発生させている情報処理系は、外部からの入力に同じ反応を
する。他の部分の感性場の遷移を同一にする。」ということです。
結局のところ、「意味」とは情報処理をコントロールする感性場のパターンに一対一対応するということに
なります。
すなわち、犬の画像も、犬という文字列も情報処理系の内部に同じ感性場のパターンを形成するのであれば
、同じ意味を有するということです。言語で思考する人間は、言葉の入力を受けて、パターンの入力を受け
たのと同じ感性場を脳内に形成しているのだと思います。
犬という言葉の入力を受けて、特定の感性場が脳内に発生します。その特定の感性場が犬の画像パターンを
脳内のある場所(出力段)に生成すれば、それは、犬という言葉を受けて、犬の画像を連想したことになり
ます。
また、犬の画像を受けて、犬という言葉を示す文字列を脳内の別の場所(他の出力段)に生成すれば、パタ
ーン認識をしたことになります。
発明とは、脳の有する自己組織化機能が
作動することで、目的機能をシミュレーションするために脳内に発生する
一時的な情報処理システムを、脳内の他の部分が認識することで、目的機能の実現方法を言語表現したものである。
前記の発明の定義は、発明の創作過程に注目して記述したものである。発明の創作の原理を、さらに詳しく示すと、
次のようになる。なお、この発明原理に基づく「発明マシン」の特許権が、日本特許第3275311号である。
発明原理:
第一ステップ 新しい機能を有する装置の、あるべき、換言すれば所要の入力と出力とを想定する。
第二ステップ あるべき入力と出力とを集中的に思考することにより、人間の右脳内に、その入力と出力との関係
をシミュレーション実行する場が一時的に自己組織化される。この場を感性場と名付ける。感性場は右脳内のニュー
ロン間結合であるシナプスの結合強度係数(シナプス荷重)が空間的に分布したものであり、これは情報処理機能
を表現する。
第三ステップ 右脳内の感性場以外の部分は感性場を認識対象のパターンとしてパターン認識を行う。
第四ステップ 感性場の局所の部分パターンに対して既知の基本機能ブロックの分布のなかで、最も類似している
既知の基本機能ブロックのパターンをそこに強制的に当てはめて感性場の局所の部分パターンをその類似の基本機
能ブロックのパターンに置き換える。そして第二ステップに戻り、再度、自己組織化を実行する。この結果、感性
場が既知の基本機能ブロックの組合せにより表現されたならば、新機能装置の創作が完了したことになる。
発明を情報の一種として記述すると、次のようになる。
発明とは、認識主体である人間から独立に客観的に存在している実体の機能や性能と、その実体の構造またはプロ
セスの因果関係についての技術的思想。
コンピュータであっても、発明原理によって動作できるようになれば、将来はコンピュータが発明できるようになる
と考える。現時点でも、ある程度の知的創作をコンピュータが行なっている。
(1)自動作曲システム
(2)自動俳句作成システム
〈3〉データマイニング
(4)ニューラルネットワーク
(5)遺伝的プログラミング
知的財産哲学に戻る 前ページ 次ページ
(C) Copyright 2006 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved