83. 件数分布型のパテントマップの作成と活用の考え方
パテントマップには、種々の形態がありますが、大きく分けてパテントの件数分布を示す件数分布マップと、パテ
ントの権利内容・技術内容の分布を示す内容分布マップの2つがあります。
件数分布マップは、自社および他社の活動度や注力度をカテゴリーごとに示すものであり、警戒すべき相手、提携
対象と考えるべき相手の決定、自社の経営資源の配分の決定の参考資料とすることができます。
当然のことながら、件数分布マップでは、カテゴリーごとのパテントの存在や存在件数、そしてそれらの増減傾向
しかわかりません。
カテゴリーの選定やカテゴリーの定義をパテントマップの利用目的に合致した優れたものにしておかねば、件数分
布マップを見ても、何の知見も得られず、次の行動の決定にも利用できません。せいぜいが、自社と他社の各カテ
ゴリーごとのパテント件数の増減傾向や件数分布から、自社はこのカテゴリーでは件数が多いが、あちらのカテゴ
リーでは件数が少ないとか、最近は件数が減っているなということがわかるだけで終わります。
件数分布マップを利用価値のあるものにするためには、カテゴリーが重要です。カテゴリーの選定やカテゴリーの
定義と、カテゴリーへの評価ランク付け、カテゴリー間の関係記述をしておかねば、件数分布マップは戦略目的に
は利用できません。
例えば、価値の低下しつつある技術のカテゴリー、重要性が向上しているカテゴリー、自社が事業展開を考えてい
る分野の各技術のカテゴリーというように、カテゴリーの評価をしておかねば戦略的な意思決定のための知見を、
件数分布マップから得ることができません。単にIPC別の件数分布マップを作成するだけで、件数分布マップに
用いたIPCをカテゴリーとして、どのように評価し、位置づけるのかを示していなければ、単なる件数分布のプ
レゼンテーションだけに終わってしまいます。
件数分布マップは、個々のパテントの中身ではなく、カテゴリーごとの出願人や特許権者の注力度や活動度をみる
ものです。それによって、警戒すべき相手をカテゴリーごとにみつけたり、相手や自分の活動度や注力度の現状や
変遷をマクロに把握します。このようなマクロな状況を把握したら、自社の技術開発における予算や人材の配置、
特許出願費用などの配置の決定の参考にすることができます。また、さらに動きを調査すべき他社の抽出、提携先
として検討を開始すべき他社の抽出などが可能です。マクロ分析である件数分布マップは、このようにさらなる詳
細調査の前の概要調査や概略方針の決定に利用できます。
しかし、このようなことも、件数分布マップにおけるカテゴリーの選定や定義、カテゴリーの評価などが適切に行
なわれていることが前提となります。
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