82. 請求項には権利書としての役割と概念設計書としての役割がある
請求項には権利書としての役割がありますので、権利範囲にはいる技術の外縁を示すことができなければなりません。
したがって、請求項記載の発明を任意の技術と比較して、その技術が請求項の範囲内に包含されるかどうかを判断
できるような記述を、請求項が有することが必要です。
請求項は概念設計書としての役割もあります。請求項を概念設計書として用いて、詳細設計書としての実施例を
当業者が作成できると感じるレベルまで到達した請求項は非常に高いレベルの理解容易性を実現しています。
請求項をもとに当業者が実施例を作成できないまでも、請求項記載の発明の動作原理を理解でき、出願書類に記載の
実施例をその動作原理に基づいて一貫して理解できるならば、その請求項は審査官も裁判官も、発明を特定するという
特許要件を満足する請求項であると認識するでしょう。
人が発明をする過程では、まずは「AはBである」とか「AとBを結合する」という形態の知見を得ます。このような
知見を1つ得るだけで発明が完成するものもあります。このような知見が、自分が持っている技術を示すグラフ構造
のノード間の対応を付けて複数個のグラフ構造を結合したり、ノード間にリンクを設定して複数個のグラフ構造を結合
することで、新しい技術である発明が脳内に構築されていくのだと思います。
審査官が、請求項を読むことで審査官の脳内においても、審査官のもつ技術知識のグラフ構造の結合が行なわれたら、
審査官は請求項記載の発明を理解したと感じます。そして、理解のレベルが深い場合には、前記したように、自分でも
その発明の実施例が書けるという感覚を得ます。これは、請求項の構成要素ごとに、それに対応する現実のデバイスや
方法やメカ構造が容易に想起できる場合に、発生する感覚です。
以上のことをもとに、請求項の構造モデルを考察することが可能です。請求項の構造モデルをもとに、請求項記述言語の
言語仕様が決定されます。
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