54. 請求項の明確化の手段としての請求項記述言語
様々な特許侵害訴訟の判例から見ても、請求項が示す権利範囲の不明確さが争いのもととなっています。
権利範囲が明確な場合には、訴訟に至る前に解決がついており、一般に知られることなく、企業間で和解契約が行
なわれています。
例えば、下記のサイトの判決をみてみましょう。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/2AC7DAAB46C2C54B49256DD7002AD5AF/?OpenDocument
この判決では、「接着剤」と「シーリング剤」の概念の関係を原告と被告とで争っています。原告および被告とも
に、多くの辞書を持ち出し、さらには明細書や公知技術を参酌して、この2つの用語の解釈を争っています。
このケースでは結局は原告が負けています。
このケースの場合は、請求項に記載の用語が辞書に登録されているものだった
のですが、辞書ごとに微妙に用語定義が異なるということと、請求項に記載の
用語の解釈に用いる辞書を指定していないことが争いの1つの原因になってい
ます。その結果、辞書における用語の定義だけでは決着がつかず、明細書の
参酌や審査経過の参酌まで行なわれています。
この事からわかることは、いくら優れた請求項を書ける職人技をもった人が
いても、請求項の基礎となる用語の意味の解釈基盤である辞書と用語との一意
的なリンクが存在しなければ請求項は不安定になってしまうということです。
また、請求項は職人技で請求項を作成する優れた人がいたとしても、出願後に
は、請求項を作成した人の手を離れて、さまざまな人の解釈や判断にさらされ
ます。その時、請求項が用語の意味が明確であるだけでなく、請求項の技術的
な構造も明確に表現されていなければ、技術開発者、事業企画者、営業担当者
などの多くの関係者からみると、請求項とは意味のわからない呪文のよ
うなものとなります。
請求項が呪文のようなものということになると、知財部員という者は呪文を唱えて、
競合企業を倒す呪術師のような別世界の人間ということになります。
これでは、事業に特許を活かすということは困難になります。
かといって、すべての特許出願について請求項をわかりやすく説明する図を
作成することは多項制での多くの請求項の存在と、請求項が補正されて変化
することを考えると無理があります。
そこで、請求項を自動的にわかりやすい図に変換することが必要となります。
自動的に請求項を図に変換するためには、コンピュータが請求項の構造を
理解することが必要です。そのためには、請求項をコンピュータでも人間でも
理解しやすく表現するための基盤である請求項記述言語が必要となると考え
ます。
請求項記述言語という基盤の上に、さらに職人技を加味することで、分かり
やすく、しかも意味の解釈に争いの少ない請求項が得られると考えます。
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