41. アイデアパワーの格差は人によって1000倍以上はある
特許戦略においても、技術戦略においても、卓越した発想をする技術者に注力することが重要ですし、マーケットや
社会の動向を見抜く能力が高い事業企画者に注力することが重要です。しかし、人によって独創のレベルが質的、量
的にどの程度の格差があるかを認識しなければ、卓越した発想をする技術者や洞察力のある事業企画者に注力すること
が死活的に重要であるかがわかりません。私の勤務する会社のA氏は、非常に卓越した発想力の持ち主です。この
A氏は、私と技術的な将来予測の会話をする中で、30分くらいの間に10件くらいの基本発明になりそうなアイデ
アを出します。もちろん、実施例をその場で書く時間はありませんので、請求項のポイントレベルで表現されたアイ
デアです。しかし、そのようなアイデアは、通常の技術者であれば1年に1件も出せないレベルの卓越したアイデア
です。私も、その場でアイデアを評価したり、さらに私のアイデアを追加してはふくらませたり、さらに別の要素を
付け加えたり、他の観点から発明を把握したコメントをします。そうすると、さらにアイデアがとめどもなく生まれ、
私は帰宅できなくなります。このようなアイデアが出るのは、現在の商品や技術におけるどんな制約が将来は技術の
進歩や社会の構造変化で消滅したり、緩和されるかということを実感として知っているから、そんな非本質的なもの
に発想が縛られないで、技術進化の必然的な法則や、未来社会の発展の状況をイメージして、発想を自由に組み立て
ていけるからです。基本発明を100点としますと、製品の一部機能の一実現手段をカバーするという通常の発明は、
1点か2点くらいの点数となると思います。A氏は30分で基本発明になりそうなアイデアを10件くらい発想しま
す。これだけで、1000点分のアイデアパワーを発揮したということになります。通常の技術者は、年間に3件程
度しか発明をしないと思いますので、通常の技術者は年間に3点から6点くらいしかアイデアパワーを発揮しません。
このように考えると、A氏は30分の間に通常の技術者が1年間に発揮するアイデアパワーの150倍から300倍
のアイデアパワーを発揮したことになります。
A氏は、このような充実した発想の時間を今でも年間に5時間は持てると思いますので、年間のアイデアパワーは通常
の技術者の1500倍から3000倍となるという計算になります。A氏の発想は非常に先進的ですので、即座に理
解して、適切なコメントや新しい切り口での助言や、アイデアの追加などをするのは難しいですが、それを実行でき
た時には、驚くほどの成果が、A氏との会話から生まれます。マーケットの先を読む目の鋭い人材、ビジネスモデルの
アイデアとビジネスモデルの評価の鋭い人材を組み合わせると、すばらしいことになります。
また、A氏のような素晴らしい発想のできるアイデアパワーのエンジンのような人に、もっとアイデアを発揮しても
らい、それを技術開発や事業開発に活かせる環境作りも必要となります。
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