359. IoTの時代ではセンシングデータがビジネスの起点となる

IoT時代では、さまざまな場所のさまざまな存在(例:人、機械、植物、気候など)の現在状態を、インターネットに接続されたセンサーから得られるセンシングデータにて 知ることが普通となる。すなわち、現地に人が行って現在状態を知るということは、旅行やレジャーなどの目的の場合に限られるようになってくる。
1980年代までは何かを調べようと思ったら、図書館に行って本を借りて、ページをめくって読んで調べることが当然であったが、今ではインターネットで各種の検索エンジンで キーワード検索して調べるのが当たり前になってしまった。

ビジネスとは、ざっくり言うと、需要者にて価値が生じるようなサービスや品物を供給者が供給することで、需要者から対価を得るということである。

そのため、需要者の状態を示すセンシングデータを供給者側は欲するし、供給者の状態を示すセンシングデータを需要者は欲する。 それぞれが、相手方の状態に対する最適行動をしようとするためである。
また、供給側から需要側にサービスや品物を運搬するための道路や通信路などのチャネルや、そのチャネルを構成する多数の事業者からなるサプライチェインの状態を、 需要者も供給者も、公的セクターも知って、それらを最適化する行動をとろうとする。

需要者側においては、類似の需要を有する需要者が集団を形成して、需要量の大規模化と安定化を図ることで、需要の単位量あたりの運搬コストや生産コストを引き下げるような 動きも出てくる。いわゆる消費者組合である。
供給者側においては、類似のモノやサービスを供給する供給者が集団を形成して、供給量の大規模化や安定化を図ることで、 供給の単位量あたりの運搬コストや生産コストを引き下げるような動きも出てくる。いわゆる生産者組合であったり、生産者側でのM&Aの動きである。

さらには、IoT時代ではシェアリングエコノミーが大きく拡大する。(参考サイト1)
シェアリングの対象となるモノ(例:家、車両、土地、衣服等)の状態のセンシングや、シェアリングの 利用者の状態のセンシングが、インターネット経由で細かく多様に途切れなく、低コストでできるようになるからである。
すなわち、モノを自分で所有して管理して使用するのと同じかそれ以上のレベルで、シェアリングエコノミーではモノの適切な管理ができるようになるので、 自分が必要なモノを自分が所有しておく必要性が大変に小さくなるのである。

このように、IoTの時代では、モノやサービスの売買やシェアリングにおいて、状態をセンシングして得るセンシングデータはビジネスの起点となるのである。

そのような重要なセンシングデータを得るためのセンサを各人が自分で所有して、地球上の広い範囲に配置することはできないので、センシングデータ流通市場が必然的に 必要となる。

これが意味することは、IoT時代での産業の発展のスイッチを押すものは「センシングデータ流通市場」であるということである。(参考サイト2)

IoTによる第4次産業革命の動きが世界的に現れているため、日本国政府もAI(人工知能)やビッグデータ処理の技術開発や産業応用に注力するという基本方針となっている。(参考サイト3)
しかし、AIやビッグデータ処理が必要とする入力データは、センシングデータ流通市場の存在なしには、地域的に広い範囲から多様に多種類を収集することはなかなかできない。

センシングデータ流通のためには、センシングデータの所有権と知的財産権の保有者を特定することが必要である。(参考サイト4)
さらには、センシングデータの利用制限を主張することのできる各種の請求権を有する利害関係者がいる場合には、それらの利害関係者との利害調整を迅速に行うことも重要である。
センシングデータ流通市場が存在してセンシングデータ流通による経済の高度化と、それによる関係者の幸福や富の増大を実現すれば、利害関係者との利害調整を迅速に 行なうシステムも多様に開発されるであろう。


【参考サイト】

1.シェアリングエコノミー徹底研究
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140616/402920/?P=1&rt=nocnt
2.特許第5445722号  アプリの要求に合致したセンサをアプリに結合する機能
http://www.omron.co.jp/about/ip/patent/17.html
3.科学技術イノベーション総合戦略2015 原案
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20150528/siryo2.pdf
4.センシングデータの所有権と知的財産権について
http://www.patentisland.com/memo358.html

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