356. 知財人材最強論(Internet of Thingsの時代では最強の人材は知財人材である)

Internet of Thingsの本質は、「全ての存在が、ソフトウェアモジュール化した機能とみなせるとともに、インターネットを介して情報空間で相互作用可能となり、 情報空間がインターネットを介して現実空間に作用を与えられる」ということである。

情報はインターネットを経由して、瞬時にさまざまな場所に流通する。そして、流通先で多様な価値を創出する。製造業にもその波は押し寄せてきている。
例えば、3Dプリンタでは、生産対象物の3Dデータを入力することで、さまざまな製品を個人でも生産できる。大規模な工場で大量生産をしたものを大量輸送 するという時代から、分散化された小規模な生産装置を用いて、消費者や使用者のもとで生産されて、輸送がほとんど必要なくなるという世界が来る。

その結果、大規模な生産工場を構築するための資本や労働の必要性が小さくなっていくのである。
これは、工業化社会での経営資源であった、人,モノ,金,情報という4つの中で、モノと金の相対的な重要性が減少していくことをもたらす。
逆に、創造性豊かな人材、創造された知的財産という情報、その知的財産に関する権利である知的財産権が経営において大変に重要となる。
また、Internet of Thingsの時代では、あらゆるモノがインターネットに接続できるソフトウェアモジュールとして取り扱えるようにされていく。

これが意味するところは、物理的な微妙な摺り合わせの要素や調整要素は、ソフトウェアモジュールの中で自己調整機能や機械学習機能で実現されて、外部からは 見えなくされ、見る必要もないようにされるということである。

すなわち、Internet of Thingsの世界では、あらゆるモノを抽象化された論理的な存在として取り扱える方向に向かうということでもある。
これは、知財人材が得意とする請求項の世界に、あらゆるモノが近付いて来るという事も意味する。

知財人材は、毎日の業務で次のことを行なっている。
(1) 物理的なレイヤーの技術を、抽象化して適用範囲の広い技術思想として、請求項を記述する。
(2) 現在は自社も他社も実施していないが将来は実施するであろう技術思想を予測する。
(3) 技術思想のレイヤーにて、公知技術との比較や、自社や他社製品の包含関係を判定をする。
(4) 技術思想の範囲内に含まれる多様な物理的なレイヤーの技術を発想する。
(5) その技術思想がもたらす新規事業の内容や規模、その技術思想が影響を与える事業の内容や規模を想定する。
(6) 知財人材は、知的財産権を中心とした各種の契約を行なう場合の契約書作成や契約チェックや契約交渉に関与している。

上記の(1)〜(4)は、Internet of Thingsの一つの本質を示す用語であるCyber Physical Systemと同じである。
言わば、知財人材は自分の脳内で日常的にCyber Physical Systemでの現実空間と情報空間の相互変換や情報空間での各種の操作を行なっているのである。
さらに、上記の(5)と(6)は、Internet of Thingsの世界で活発化するであろう情報ビジネスや権利ビジネスそのものとも言える。

すなわち、知財人材は昔から情報空間の住人であったのである。


そして、現実の産業社会がInternet of Thingsによる第4次産業革命の結果、情報空間を中心とした社会を形成するので、知財人材がその社会では最強の人材となるのである。
なぜならば、さまざまな職業と比較して、知財人材ほどIoTによる産業革命後の世界に適した資質を獲得している人材は他に存在しないからである。

【参考サイト】 1. 一般社団法人日本機械学会 生産システム部門 インターネットを活用した「つながる 工場」における生産技術と管理のイノベーション研究分科会(P-SCD386)中間とりまめ
http://www.jsme.or.jp/msd/sig/cm/N008_industrial_valuechain_initiative.pdf

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