335. 特許法第70条第2項の趣旨
特許法70条第2項の改正の経緯および趣旨を知らずに、改正前の判例によって培った知識をもとに、請求項を実施例に限定解釈する弁理士を時々見受ける。
そこで、特許法第70条の直近の法改正の内容を参考サイト1の中から抽出して示す。
特許法70条の直近の改正は、平成14年法によるが、これは参考サイト2を読めばわかるが、単なる表記ミスの訂正をしているだけであり、内容の改正はしていない。
したがって、直近に内容が改正されたのは平成6年法においてである。
●平成6年法改正の内容と経緯の解説を参考サイト3に示す。重要な部分は、特許法第70条第2項において「用語の意義」と規定した理由を示す補説である。
そこには、次のように述べられている。
第70条の改正にあたっては、第2項として「特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明及び図面を参酌して解釈する」旨の規定を置くことも当初検討された。
しかし、このような規定では、発明の詳細な説明等の記載についてどの程度の参酌が許されるのかが法律上明確ではなく、その結果、この規定を根拠に特許請求の範囲の
記載を発明の詳細な説明中に記載された実施例に限定して解釈することを容認したものではないかとの解釈を生じ得るとの懸念があった。
そのため、リパーゼ判決の捉え方の相違により生じていた混乱を収束するための確認規定であるとの趣旨を明確化するという意味から、「用語の意義」を解釈するとの
規定を採用した。
●また参考サイト4に示す「工業所有権法逐条解説の第4章特許権」では、特許法第70条第2項について、次のように解説している。
二項は、平成六年の一部改正により追加された規定であり、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められることを原則とした上で、
特許請求の範囲に記載された用語について発明の詳細な説明等にその意味するところや定義が記載されているときは、それらを考慮して特許発明の技術的範囲の認定を行う
ことを確認的に規定したものである。
また、本項は、特許請求の範囲に記載された個々の用語の意義の解釈について規定したものであるから、この規定により、
@特許発明の技術的範囲を発明の詳細な説明中に記載された実施例に限定して解釈することや、
A発明の詳細な説明中には記載されているが特許請求の範囲には記載されていない事項を特許請求の範囲に記載されているものと解釈すること
が容認されるものでないことは
いうまでもない
【参考サイト】
1.産業財産権法(工業所有権法)の解説 【平成6年法〜平成18年法】
http://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/sangyou_zaisanhou.htm
2.平成14年法改正新旧条文対照表
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/pdf/taisyohyo_t.pdf
3.平成6年法改正
クレーム解釈にあたっての発明の詳細な説明の参酌
http://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/h6_kaisei/h6_kaisei_4.pdf
4.工業所有権法逐条解説の第4章特許権
http://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/cikujyoukaisetu19/tokkyo_4_1.pdf
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