332. 発明創造の技法と、エネルギー・物質・情報の流れのパターン
発明を表現する請求項には、発明の効果をもたらすための必須の事項を記載します。
発明の効果とは、対象における何らかの良い状態の実現です。
そして、良い状態を実現するためには「作用」を、良い状態になるべき対象に及ぼすことが、必要です。
しかし、その作用が良い状態をもたらすためには、適切な条件を満足した上での作用でなければなりませんし、
作用を生成するためにはエネルギーの面でも情報の面でも物質の面でも、しかるべき材料の供給が必要です。
適切な条件を満足させるためには、さらに別の作用が必要となりますし、しかるべき材料の供給をするためにも、さらに別の作用が必要となります。
作用とは対象の状態を変化させる働きであり物理学的には「力」です。そして作用の能力の源はエネルギー、物質、情報です。
エネルギーについてはエネルギー保存則が成立します。物質については質量保存則が成立します。情報についてはエントロピー増大の法則が成立します。
また、作用と物体の運動の間には「最小作用の原理」が成り立ちます。
最小作用の原理は物理学の根本原理であり、最小作用の原理から電磁気学のマックスウェル方程式も導出することが可能だそうです。
発明の本質を把握するためや、不要な要素を含まないシンプルで美しい構造の発明をするためには、対象に良い状態をもたらすための作用を明確に認識し、
その作用の形成に必要なエネルギーと物質と情報の流れのパターンにだけ、まずは注意を集中することが必要です。
そして、エネルギーと物質と情報の流れのどんなパターンを実現をする必要があるのかを、徹底的に考察し、それから、その流れの各部を具体的にどのような手段で実現するのかを考えることが
良いと思います。発想の初期段階から、何らかの手段を前提にしていると、その手段特有の条件や特性に惑わされてしまい、視野狭窄になってしまい、発明の本質が見えなくなりがちです。
対象に良い効果をもたらすためのエネルギー、物質、情報の流れのシンプルで美しい構造のパターンを発想した後に、パターンの各部分を実現するための手段をみつけます。
その際の発想法は、「〜を〜するためには何が必要か?」という形式となります。すなわち、「〜を」で示される「対象」に対して「〜する」で示される「作用」を及ぼすための「手段」として
「何が必要か?」を発想します。そして、その「手段」による作用発現の条件と作用発現のための材料について、「〜を〜するためには何が必要か?」という形式でさらに発想します。
このような事が原因で、請求項は、対象と、対象の目的状態と、目的状態を形成するための作用の発現をする手段の、多層・多重システムで表現されるのだと思います。
この多層・多重システムを適切な抽象度で眺めると、作用は、エネルギー、情報、物質の流れであること、請求項はエネルギー、情報、物質の流れのパターンであることを認識できます。
異なるシステムの間でのこのような流れのパターンの等価性を認識して発明創造に活かすのが、等価変換理論です。
このような発想方法をもう一度、説明すると、次のようになります。
発想の方法として、対象に関して、目的とする効果を状態表現し、そのような状態を形成できる作用を見つけ、その作用発現のためのエネルギー、情報、物質の流れのパターン
を見つけ、その流れのパターンの各部分を実現する手段を見つけ、その手段が作用を適切に発現するための条件が形成されている状態、
その手段が作用の形成のために必要とする材料がそろっている状態のそれぞれの状態を表現します。
そして、表現した各状態を実現するための作用をさらに発想するということを、多層・多重に実行することで発明ができあがっていくと思います。
前記した、「対象、手段、作用の組」は、「〜を〜で〜する」という一般形式で表現でき、「〜を〜で〜する」の実行によって対象の目的状態を形成します。
そして、「〜を〜で〜する」は、等価変換理論における「cε辞典」としてまとめられていますので、これを参考にすることで発明が行ないやすくなります。
前記した「作用」の中には、他の作用が実現しようとしている状態に影響を与えるものもあります。
極端な場合、複数個の作用の間の関係が矛盾関係となる場合もあります。作用Aが実現しようとしている状態をSaとし、作用Bが実現しようとしている状態をSbとした場合、
SaとSbが逆方向の特性を持った状態であるという矛盾関係や、Saが作用Bの適切な発現のための条件を破壊する状態であるという矛盾関係や、
Saが作用Bのための材料の供給に支障を与える状態であるという矛盾関係もあります。
このような矛盾関係が発生したら、矛盾解消の方策を検討します。この検討に矛盾関係のパターンと矛盾解消方法の知識(Triz)を用いることもできます。
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