Patent Island

３１７．アイデア出し会議の進め方

１．　発明の創造をするためのアイデア出し会議には、次の要素がある。これらの要素を適切に設定する事と、それらの要素の状態に応じて、打ち手を臨機応変に変えることが必要である。

【アイデア出し会議の要素】
（１）アイデア出しのテーマ
（２）アイデア出し会議の参加メンバー
（３）アイデアに関連する情報
（４）アイデア活用の実行可能な計画

２．　アイデア出しのテーマについては、次のようなカテゴリーがあり得る。
（１）　設定された顧客価値仮説を起点とした「顧客価値を実現するためのアイデア」
（２）　獲得した又は獲得を目指す新技術を起点とした「新技術の進化と応用と代替のためのアイデア」
（３）　社会や環境の未来像を起点とした「新たな価値と、その価値を実現するための機能のアイデア」
（４）　既存の商品や技術の有する課題を起点とした「課題を解決するための機能や性能、その機能や性能を実現する技術のアイデア」
（５）　すでに創造済みのアイデアを起点とした「既存アイデアの目的や構成を上位概念化することで見えてくるアイデア」
（６）　既存の商品やアイデアが有する構成要素や、動作や使用のための前提条件の１個以上を極端なものに設定することを起点とした「極限対応アイデア」
（７）　既存の商品やアイデアが用いている動作原理や構造（アーキテクチャ）を他のものに置換してみることを起点とした「別方式アイデア」

３．　アイデア出し会議の参加メンバーの属性として考慮すべきものは、次のとおり。
（１）　概念形成能力
（２）　問題抽出能力
（３）　情報収集力
（４）　分析と論理思考能力
（５）　組合せ発想能力
（６）　予測と推定能力
（７）　計画性と実行力
（８）　表現力とコミュニケーション能力

４．　アイデアに関連する情報としては、例えば次のものがある。
（１）　公知技術
（２）　そのアイデアを適用すると想定される商品分野での市場と顧客と規制や標準化等に関する情報
（３）　そのアイデアの基盤となる科学的理論や社会的な役割を説明する理論の情報
（４）　そのアイデアを適用したり組合せ可能な社内資源（技術、商品、プロジェクト等）に関する情報

５．　アイデア活用の実行可能な計画には、次のものがある。
（１）　特許出願と特許権活用
（２）　マーケティング
（３）　技術開発又は商品開発
（４）　共同開発又はＭ＆Ａ
（５）　技術導入又は人材獲得
（６）　標準化

６．　アイデア出し会議の要素の状態に応じたアイデア出し会議の進め方の例として、次のものがある。
ステップ１：　アイデア出しのテーマを設定するための起点となるものを確認する。
ステップ２：　アイデア出しのテーマ設定の起点が１個以上あれば、各起点をもとにしたテーマをリストアップする。
ステップ３：　設定したテーマをもとに、参加が想定される主要メンバーに対して、各テーマについて次の事ができそうかどうかの感触をヒアリングしてみる。
　Ａ：概念形成、Ｂ：問題抽出、Ｃ：情報収集、Ｄ：組合せ発想、Ｅ：将来予測と応用分野の推定

ステップ４：　ステップ３でのヒアリング結果に基づいて、参加が想定される主要メンバーの能力と、その能力に応じた「最初に取り組むべきテーマ」を把握する。
ステップ５：　アイデア出し会議の主要メンバー、テーマ、事前準備の内容、当日のアイデア出し会議運営方法、会議後の想定活動内容からなる会議アジェンダを作成する。
アイデア出し会議の運営方法としては、次のような方式がある。
　方式１：　ブレーンストーミング（設定したテーマに関して自由にアイデアを出し、できるだけ批判せず各アイデアを膨らませる）
　方式２：　プレゼンテーション＋コメント（設定したテーマに関して、主要メンバーにアイデアをプレゼンテーションさせ、そのプレゼンテーションについてのコメントを出すことで、アイデアを膨らませる）
　方式３：　フレーム設定による体系的アイデア出し（アイデアを出すべきテーマの構造を体系的なフレームとして形成し、その体系に基づいて網羅的にアイデアを出す）
　方式４：　各参加者が自分のアイデアを事前またはその場で書類に記述し、記述した書類をアイデア出し会議参加メンバーで回覧しながらコメントを追記する事で、アイデアを膨らませる。
ステップ６：　会議アジェンダを示してアイデア出し会議を招集する。
ステップ７：　アイデア出し会議をアジェンダに従って実行する。ただし、会議の中で、参加メンバーの状態や能力およびアイデア出し会議に必要な情報の収集の状態を把握して、途中でアイデア出し会議のテーマを変更したり、運営方法を変更する事も行なう。