31. ユビキタスネットワーク特許戦略の時代の始まり

2002年9月1日から施行された改正特許法によって、媒体に記録されていないコンピュータプログラム、特別 な構造のデータでも、特許法でいう「物」として取り扱われて、特許法の保護が受けられるようになりました。
すなわち、コンピュータプログラムや特別な構造のデータ(プログラム等という)の生産、使用、譲渡、貸し渡し、 輸入、譲渡などの申し出はプログラム等の発明の実施行為となりますが、それに加えて、プログラム等を電気通信 回線を通じて提供する行為も、実施行為となりました。

http://www.jpaa.or.jp/publication/patent/patent-lib/200211/jpaapatent200211_003-006.pdf

ハードウェアを制御するという機能を担っていることを条件に特許権で保護されるという時代から、ハードウェアを 制御しなくても記録媒体に記録されているだけで保護される時代を経て、ついには記録媒体に記録された形態でなく ても、コンピュータプログラムや特別なデータ構造は特許権で保護されるようになりました。
このことは、見方を変えると、バーチャルワールドの存在であるプログラムとデータが、新規性、進歩性を有するなら 特許権で保護されるようになったことを意味します。
現在、世の中は急速にバーチャルワールドとリアルワールドの二重世界に移行しつつあります。IPv6によって、IPアドレス の空間は無限大と思えるほどに拡大しました。そして、RFIDの小型化、ローコスト化によって、さまざまな製品、物体、生物 のID情報を簡単にアクセスできるようになりつつあります。また、携帯電話、組み込み型コンピュータ、無線センサがインターネ ットに接続され、夢物語であったユビキタスネットワークがまさに実現をしようとしています。
こうなると、リアルワールドの全ての存在が、対応するオブジェクトをバーチャルワールド内に持ち、リアルワールドでの出来事が、 リアルタイムでバーチャルワールドに反映され、バーチャルワールドでの行為をリアルワールドの世界に反映することが可能になっ てきます。そして、製品やサービスに付加価値をつけるための大きな要素として、バーチャルワールドで利用可能に保持されたり、 取引や合成の対象となる知識情報がその価値を増大させていきます。バーチャルワールドでのオブジェクトは、リアルワールドでの 実体を示すモデルデータと、実体の特性をバーチャルワールドで再現するためのプログラムから構成されます。
ユビキタスネットワークにおけるオブジェクトと知識を構成要素とする特許権の攻防である「ユビキタスネットワーク特許戦略」の 時代が始まったと言えます。

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