285.技術で勝ち、特許権獲得で勝ち、国際標準化で勝っても、事業で負けるとはならないために
日本が技術でも知財権でも勝っているのに、事業でぼろ負けした事例としてはDVD産業があります。
下記サイトにて、東大の小川紘一教授が詳しく分析しています。特に第21ページの図9と脚注に注目ください。
http://www.iam.dpc.u-tokyo.ac.jp/workingpapers/pdf/papers_091014ogawa.pdf
これは、次の2つを意味していると思います。
@ 日本は知的財産権のロイヤリティ率を現在の5%程度を常識とする暗黙のルールを打破し、30%程度とするようなルール変更を主導すべきである。
A 日本は知的財産権の侵害摘発を行なう「ポリス・ファンクション」を徹底すべきである。
国際標準化を主導することや、技術のオープンとクローズの組合せ、インテグラルとモジュラーの組合せというフレームワークの採用ということにばかり目が行っていますが、
それらをやったとしても上記の@とAがなければ、技術と知的財産権と国際標準化で勝って、事業で負けるということに、またまたなってしまうと思います。
その意味で、日本の知財立国政策に決定的に欠けていた「ポリス・ファンクション」、すなわち特許権侵害摘発の機能強化が、重要ということだと考えます。
このポリス・ファンクションは、特許権侵害の証拠の確保・分析と、特許権行使または特許権侵害罪の適用の2段階となりますが、特許権侵害の証拠の確保・分析が特に重要です。
特許権行使については法制度の整備や専門家の育成は日本国は十分にできていますが、特許権侵害の証拠の確保・分析と特許権侵害罪の適用の体制や能力が大変に貧弱な状況です。
そのため、知的創造サイクルがうまく回っておらず、「技術で勝って事業で負ける」という状況に日本企業が陥っているのです。
標準化への対応のまずさも原因ですが、それだけが「技術で勝って事業で負ける」という状況の原因ではないということです。
すなわち、技術で勝ち、特許権獲得で勝ち、国際標準化で勝っても、事業で負けるとはならないためには、特許権侵害に対するポリス・ファンクションが重要という事です。
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