272.特許業務は「事業貢献ネタ」の開発・蓄積・組み合わせが重要

特許業務は「事業貢献ネタ」を多数開発して蓄積する段階、「事業貢献ネタ」を組み合わせて特許戦略のコアを形成する段階、その 特許戦略を実行して事業貢献の成果をあげる段階の3段階で把握し、実行することが事業貢献性の高い特許業務には効果的 であると考える。

ここで、「事業貢献ネタ」とは、単なる特許権でもないし、特許権の群でもない。

「事業貢献ネタ」とは(知的財産権または契約に基づいた権利,左記権利によって支配力を行使可能な他者の技術や製品やサービスまたはそれらに関する活動)の組 である。そして、そのような組が成立することの説明または鑑定が事業貢献ネタには付随していなければならない。

したがって、「事業貢献ネタ」は、(特許権,その特許権の権利範囲内の他社商品)というような組み合わせを基本形態とするが次のような発展形態もある。
すなわち、(特許権,その特許権の権利範囲内の他社の将来商品)や(特許権,その特許権の権利範囲内の他社または業界の将来技術)としても良いし、 (特許権,その特許権の権利範囲内の業界標準化技術)や(特許権,その特許権の権利範囲内の世界標準化可能性の高い技術)でも良い。 さらには、(特許権,その特許権の権利範囲内の他社商品アプリケーション)や(特許権,その特許権の権利範囲内の業界汎用モジュール) でも良い。
もっと事業貢献ネタの範囲を広げると、(契約,その契約を用いて影響を与えることのできる他社事業)という組み合わせや、 (著作権,その著作権を用いて立ち上げることのできるソフトウェア製品事業)というものもある。
ただし、事業貢献ネタには、このような組み合わせが可能であるという納得性のある情報(例:特許権等で支配力を行使できる対象製品等であることを示す説明または 鑑定の情報)を付随させておくことが必要である。

このような様々な種類と規模と確度の事業貢献ネタを多数、開発し蓄積し、事業貢献ネタを1個以上組み合わせることで、成功確率の高い特許戦略の立案を 多様に素早く実行できる。言わば、特許戦略のモジュール化である。

特許戦略論の体系からみると、事業貢献ネタは特許戦力が事業貢献のために形成して用いる特許戦略情報の基本単位であると言える。

例えば、特許権行使によって競合製品を排除するという事業貢献においては、排除対象の競合製品を要素とする事業貢献ネタを1件以上組み合わせる。 そのような事業貢献ネタが5件程度あれば、その特許権行使は成功確率が大変に高くなる。 また、顧客からの発注を競合企業との競争に勝って獲得するためには、発注対象製品を要素とする事業貢献ネタを1件以上と、発注を争う競合企業の主力製品 を要素とする事業貢献ネタを1件以上組み合わせて事業貢献のための特許戦略を組み立てることもできる。

すなわち、企業の特許業務の基本単位を1件づつの特許権の取得とするのではなく、1件づつの「事業貢献ネタ」の形成と するというパラダイムシフトが、事業貢献性の高い特許業務には必要である。

このようなパラダイムシフトなしに、特許権を獲得するだけで終わっていては、事業貢献ネタが出来ないので、事業貢献活動の内容を発想することも実行する ことも大変に難しくなる。 言い換えると、事業貢献ネタを開発し、事業貢献ネタを事業戦略に沿い特許戦略論に基づいて組み合わせて特許戦略を構築し実行するために特許権を取得しているのだ という意識が必要である。したがって、権利範囲内にはいる他社製品や技術標準などが存在せず、しかも現在または将来での存在の可能性も想定できないような 特許権をいくら取得しても事業貢献はできないことを肝に銘ずるべきである。

特許戦略をたんぱく質に例えると、事業貢献ネタはアミノ酸に例えることができる。事業貢献ネタには、用いる権利の種類と権利を用いる対象の組み合わせで、 いくつかの形態があるし、それらを組み合わせることでたんぱく質のような構造の特許戦略が実現できるからである。
事業貢献ネタを結合して特許戦略を作成し、実行するためには特許戦略論の知識が必要となるが、これは遺伝子という知識が介在して、アミノ酸のプールからアミノ酸を 選択して組み合わせてたんぱく質を合成するという生物の働きに似ていて興味深い。



上記の図の出典: http://www.biotech-house.jp/glossary/glos_54.html

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