238.知財業務での受験勉強スタイルの弊害

問題を具体的に与えられないと動けない、確固とした答えがあるものでないと動けない、細かな仕事の手順書 がないと動けない、能力は問題集を解いて身につけようとする、というような受験勉強スタイルの人たちが 他の業界と同じく、知財業界にも多数います。
たぶん、このような人たちは「概念形成の感覚」を経験したことがないのだと思います。
自分の中に、ぼんやりとだが何か価値ある知見が生まれかかっているという感覚です。この感覚を経験し、 この感覚を持ちながら、情報収集、仮説と検証のサイクルによる深い分析、時には何歩も退いて全体像を眺め ること、さらには一時的に忘れて他のことを行ない潜在意識が概念形成をしてくれるのを待つ、というよう なプロセスが、高度な問題発見や問題解決には必要です。
簡単な問題については、上記の一部のプロセスが一瞬で起こり、問題発見と問題解決が即座にできる場合も あります。
しかし、複雑にからみあった問題、全く新しい領域の問題については、概念形成の感覚を持ちながら、じっくり と根気強く長期にわたって取り組むことが必要となります。

知財業務を受験勉強スタイルでやろうとすると、たとえば次のような問題がおこります。

(1)知財業務が事業にも経営にもあまり貢献できていない場合でも、その問題も解決策も見出せず、常に 同じ組織体制で同じことをやり続ける。
(2)知的財産権の事業のための活用というような不確実性と、リスクとチャンスと多数の利害がからみあい 、常に個別事情による大きな問題があるようなテーマに着手しようとしない。
(3)新たな業務に取り組むためのワークフローや組織体制の見直しをやりたがらず、過去の体制にしがみつく。
(4)技術者や研究者の発明を、公知文献との比較だけで簡単に拒絶するだけで、発明を価値あるものに育てる ためのアイデアを提供したり、発明者を導くということをせず、発明者のモチベーションを損なう。
(5)知財リスクの存在だけを示し、知財リスクの回避や消去のためのアイデアを示さない。

受験勉強をやり続けると、どうしても受験勉強スタイルとなりますが、受験勉強スタイルでは知財業務に限らず 高度な業務は実行できません。受験勉強スタイルに頭脳を汚染されてしまった人に問題発見と問題解決の能力 を身につけさせるためには、まずは受動的な姿勢を能動的な姿勢にすることが必要です。

【参考サイト】
1. 問題を発見する能力
2. 問題発見プロフェッショナル

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