233.機能の表現形式と、技術の表現形式

技術戦略を論じる場合においても、特許戦略を論じる場合においても、機能の表現形式と技術の表現形式の違いを明確化 しておくことが重要となる。なぜならば、技術戦略も特許戦略も事業における貢献によってその価値が実現されるのであるが、 事業においての技術戦略の貢献のポイントは、高い顧客価値をもたらす「機能」を高い競争優位性をもたらす技術を用いて実現 することにあり、事業における特許戦略のポイントは、高い顧客価値をもたらす「機能」を現実の事業で実現することのできる 様々な技術を広くカバーする権利範囲の特許権を取得し、事業のためにその特許権を活用することにあるからである。
すなわち、技術戦略においても特許戦略においても、機能を的確に表現すること、技術と機能を区別して技術を表現することが 基盤として重要となる。

先行研究によると、機能の表現形式には次のようなものがある。
まず、参考サイト1によると、機能表現形式は次の3種類となる。
(1)動詞を中心とした機能表現
実際に設計者が設計対象の働きについて述べるために用いる動詞と名詞の組合わせによって表現する方法
(2)入出力を中心とした機能表現
機能をエネルギー、物質、情報の入出力として表現する方法
(3)状態変換による機能表現
機能を発現前と発現後の状態変化によって表現する方法

参考サイト2によると、機能は「目的語+他動詞」で表現する。例えば、「部屋を(目的語)冷やす(他動詞)」という 形式で機能を表現する。(参考サイト3)

参考サイト2および3に記載の機能の表現形式は、参考サイト1での「動詞を中心とした機能表現」に該当する。

したがって、まとめると機能の表現形式は次のようになることがわかる。
@「部屋を(目的語)冷やす(他動詞)」というように、「目的語+他動詞」で表現する。
A「電気エネルギーと暖気を入力して、冷気を出力する」というように、「エネルギー、物質、情報の入出力」で表現する。
B「暖かい室温の状態を冷たい室温の状態にする」というように、「発現前と発現後の状態変化」で表現する。
どの機能表現形式にも共通しているのは、機能の実現手段の内部構造(複数個の構成要素と、それらの構成要素間の関係を示す 構造)を述べない(問題にしない)で、「作用」だけを述べているということである。

技術とは機能の実現手段である。そして、機能を実現する場合、機能を実現する場所と時間の限定が必要となる。もし、場所と 時間の限定のない機能であれば、その機能の実現をしようとする前から全ての場所においてその機能は実現されているので、 新たに実現する必要がないからである。そうすると、機能は少なくとも機能実現の場所と時間を限定することが本質的に必要と なり、通常はさらに、機能実現の主体と客体の限定も行なうことで、機能実現が「目的」のために行なわれるというようになる。 通常、機能実現の目的は主体または客体の何らかの利益の実現だからである。

以上の分析から明確化されたように、機能は(ある主体がある客体のために)場所と時間を限定して作用を実現するものである。 そのため、通常は機能の実現のためには複数個の構成要素(何らかの作用を実現する物体または装置または処理方式または人間 等)を複数個組み合わせることが必要となる。したがって、技術の表現形式は、作用を実現するために用いる構成要素を複数個 示すとともに、その構成要素間の関係を記述する形式になる。
これはまさに、請求項の表現形式である。

【参考サイト】
1. 入出力を中心とした機能表現と動詞を中心とした機能表現の比較と分析
2. 第5回 機能の表現
3. 4−3 機能表現と機能別方法調査
4. 機能モデリングと設計支援
5. オントロジー工学に基づく機能的知識体系化の枠組み

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