212.知的財産と知的財産権の、蓄積と活用による知財組織の組織能力の成長

知的財産と知的財産権の蓄積がなければ、知的財産の活用も、知的財産の活用を保護・増進するための 知的財産権の活用もできない。
しかし、知的財産も知的財産権も蓄積するだけで活用を怠っていると、組織からそれらの活用能力と 活用の意志が失われていく。そうなると、知財組織の存在価値も喪失していく。事業や経営に対する 貢献の実績も貢献の意志もなくなっているためである。

知的財産の活用とは、知的財産(技術やコンテンツや知識やデザインや信用など)を用いた事業の 実施である。知的財産権の活用とは、知的財産権(特許権、著作権、意匠権、商標権など)を用いて、 事業を維持・成長させたり、他社と提携して新分野の事業を開拓することなどである。
知財組織の組織能力の基盤は何であろうか?

知財組織に限らず、組織能力の基盤は、組織としての価値観と気風である。 価値観が存在していなかったり、間違った方向の価値観を持っていると、どんなに人員を増強しよう が、予算やインフラを増強しようが駄目である。
ここで、「間違った方向」とは、「組織が貢献する相手(顧客または支援対象または監視対象)の 価値増大に貢献する方向とは異なった方向」を言う。

価値観は目標設定の基準になるし、行動を制御するし、情報を含む資源の取捨選択の基準になる。
気風も価値の基準ではあるのだが、価値観ほどには明確でなく、たいへんにぼんやりとしたものである。 明確に記述できないものだけに、自分達の気風を意識したり、気風を変革することは大変に難しい。
価値観は、活動を制御する基盤ではあるが、活動を通じて形成されたり、変更することが可能である。
また、徹底した教育によって価値観を修正することも可能である。
組織が貢献する相手の価値増大に徹底して取り組む中から価値観を形成していくことが王道である。 組織が貢献する相手が望むことは、必ずしも組織が貢献する相手の価値増大をもたらすとは限らない ということを認識しながら、この王道を実行することが重要である。
いずれにしても、知的財産の活用、知的財産権の活用がなければ、組織が貢献する相手の価値増大は 実現できない。蓄積は活用の前提として必要だが、蓄積だけにとどまっていてはならない。 活用を通じて、正しい価値観を形成し、正しい価値観を用いて組織としての知識や装備や外部との連携関係や 組織の構成員の能力を正しく成長させていくのである。
特許戦略メモに戻る      前ページ      次ページ

(C) Copyright 2008 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved

戦略のイメージに合うフリー素材の動画gifを、http://www.atjp.net からダウンロードして活用しています。