140.特許戦力を構成する組織パワーのための知財人材の評価
組織パワーの計測の根本は、組織目的の達成に必要な知財組織の人的パワーの充実度を計測することである。
知財人材の能力の一部を測る尺度として、弁理士資格を有するかどうか,知財検定の何級であるかなどを、
組織目的とは無関係に、知財人材の擬似的評価基準とすることもできる。
しかし、当然のことながらこれらの資格試験に合格している事だけをもって、知財業務で成果を出せる知財
人材としての能力があるとは判断できない。
これらの資格試験で計測できるのは、これらの資格試験で出題される問題を解く能力でしかなく、知財業務の
遂行に必要な意志力、問題発見能力、構想力、実行力、調整能力、人脈、情報収集と分析の能力、コミュニケーション
能力、技術評価能力、独創性などの重要な能力項目の計測ができないためである。
したがって、知財業務の評価をできる評価者が存在する場合には、知財業務の成果とプロセスを評価する
ことで、良い成果を出した知財人材や、良いプロセスで業務を行なった知財人材の評価が可能となる。
知財業務の成果やプロセスを評価をできない評価者が無理に知財業務を評価しようとすると、知財業務のボリュームを示す
表面的な数値だけに頼ることもおこりえる。例えば、出願件数,特許査定率,調査件数などである。
また、知財人材の能力を外部からの評価に頼って行なうということも発生する。
例えば、外部の知財委員会活動への参加の度合いや参加における立場、外部での知財関係の講習会での講師の
経験回数などをもって、知財人材の能力を測るための擬似的評価基準とすることなどである。
擬似的評価基準を中心に知財人材の評価を続けていると、そのような評価基準に適応しようとする動きが知財
組織のメンバーに蔓延するようになる。
そうすると、資格試験,外部委員会活動,表面的な知財業務数値の向上に注力するメンバーが増加してきて、
知財組織の目的を達成する知財業務で成果を出そうとするメンバーがいなくなってくるようになる。
資格試験に合格したり、外部委員会活動で主導的な役割ができる人材は、知財組織の組織パワーを向上させる
ための潜在能力を豊富に有している可能性が高いので、それらの人材が知財業務で成果を出そうという高い
モチベーションを実現することが必要である。
そのためには、明確で適切な組織目的(ミッション)を知財組織が掲げ、その組織目的の達成のための知財
戦略をたて、その知財戦略の成果や実行プロセスを評価するという当たり前の事を実行することが王道である。
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