124. 特許爆発

単位期間あたりの特許公開件数が期間の経過とともに増加することで、公開件数の累積値が加速度的に増加し、 特許調査や評価・鑑定の可能な件数を越えてきた状況を、「特許爆発」と名付ける。
特許爆発は、時代のトレンドに乗り大きな市場形成が予感される技術分野であって、割合に新規参入のやりや すい分野で発生することが多い。(例:ゲノム工学分野、ビジネスモデル特許分野など)


ゲノム工学分野の分野での特許爆発を示すグラフ


出典: http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/kagaku12/1/1-1-2.htm





出典: http://knpt.com/contents/news/news00027/news27.htm


特許爆発を起こした分野では、多数の企業が数年にわたって特許出願を増加させていく。そして、特許出願を する企業数も増えていく。
特許爆発の分野では、他社特許リスクの評価および対策のコストが膨大となるが、そのような膨大なコストをかけても、 参入したどの企業にとっても特許リスクは、安心ができるレベルにまで低減させられない。
特許爆発を起こした分野では、事業参入しようとして、数年間チャレンジするも失敗して撤退する企業が多数 発生する。そのような撤退企業には特許権が残るので、撤退企業が市場残留企業に特許権を行使して実施料を 請求することも発生することになる。
事業撤退した企業からの特許権行使に対して市場残留企業は特許権で対抗することができない。まるで、ゾンビ を相手にしているような状況となるのである。
特許爆発を起こした分野では、市場残留企業の間でも特許権を用いた紛争が発生しやすいので、それを避ける ために、パテントプールを形成することも行なわれる。
特許爆発をおこした分野では、調査・鑑定・対策実施というオーソドックスな特許リスク低減策はコストや時間の 面から実行不能となる。
そのため、「特許リスクにおける小規模事業者優位の法則」の応用や、多数の商品モデルを構築すると共に商品モデルごとに 利用技術を異ならせて、1つの他社特許権でカバーされる自社製品の割合を許容できるレベルにまで小さくさ せる事や、権利行使側の立証負担コストを増大させるという防衛策も必要となる。

特許爆発の状況では、知財立国政策の成果も矛盾点も凝縮して噴出する。
すなわち、審査も権利活用も侵害回避も追いつかないほどの特許爆発が起こった場合、知的創造サイクルは回らなくなるのではないかということである。

出典 http://www.ipr.go.jp/intro4.html


したがって、特許爆発は、パテントプールの問題、特許価値評価、知財リスク管理、特許情報処理も大きく影響する 注目すべきテーマであり、その課題と解決策に関する多くの人々による研究が望まれる。

【参考サイト】
(1) 特許リスクにおける小規模事業者優位の法則
(2) 特許戦争における特許リスク比方程式
(3) 特許戦略における数量的法則
(4) 活用可能特許の抽出コストと特許権維持コストを考慮した特許パワー評価

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