3.政治公約券制度
注) 政治公約券制度の説明資料のPDFファイルを、ダウンロードできます。
【政治公約券制度の概要】
国民に支持された政治公約を達成した政治家は、国から借りた政治資金を返さなくてよくなる。また、最大多数の国民の幸福につながり、実現された政治公約を選択した国民には
国から賞金が与えられる。
【背景説明】
官僚の腐敗が深刻である。彼らを指導・監督すべき国会議員(政治家)にもたびたび汚職が発生している。官僚による民間企業に対する規制を個別に一時的に緩和したり、公共事
業の発注に影響力を行使しては政治家は政治資金を企業や団体から得ている。政治資金の公的助成制度が存在してもなお、企業・団体からの献金がなくならない。共産党や社会民主党は、
企業・団体献金を禁止すべきであると主張している。私はこの主張に賛成である。
その理由は「最大多数の最大幸福を実現する。多数決原理によって決定する。」という民主主義の大原則は、自然人を対象としているのであって、法人は対象としていないからである。
民主主義において法人は政治に関与してはならないのである。このように言うと、法人も税金を納入している社会的存在であるので、政治に関与するための政治献金をすることは妥当で
あるという理論を主張する人がいる。しかし、法人とは自然人が集まって構成したグループに疑似的・便宜的に法的人格を与えたものである。したがって、法人の政治参加を許すと、
多数の法人を経営する者や大きな法人を経営する者に大きな政治的な発言力を与えることとなり、最大多数の最大幸福や多数決原理をねじ曲げる事となる。
したがって、法人である企業や団体の政治献金は禁止すべきである。
企業団体献金を禁止して、政治家の政治活動資金はどのように調達するのかという問題が残る。その答えの1つが、政治資金の公的助成制度である。この公的助成制度には、既存の政党
でないと助成を受けられない、政治資金の分配が政党幹部に任せられるので、政党内での政治家の自由が減少するという欠点がある。
そこで、政治資金の公的助成制度に替わるものとして、政治公約券制度というものを提案する。
【政治公約券制度の内容】
政治公約券制度は、次のようなものである。
(1)国会議員や国会議員立候補者は、自分の政治公約を達成期限と達成したかどうかの判断基準を明示して、具体的に記述した政治公約券を発行する。政治公約券1枚に公約を1件のみ
を記載する。政治公約券の発行費用は全額、国が負担する。
(2)日本国の有権者は、誰でも年に例えば1枚の政治公約券を選択して、無料で入手することができる。
(3)国会議員や国会議員立候補者は、自分の発行した政治公約券が選択された枚数に比例した政治資金の貸し付けを、国から受けることができるとする。例えば政治公約券の選択数が
1万枚について1000万円の貸し付けが得られるとすると、100万枚の政治公約券の選択を受けた政治家は、10億円の政治資金の貸し付けを受けられる。
日本の有権者の総数は約6000万人であるとすると、政治資金の貸し付けに必要な予算は、最大で年間600億円である。
(4)政治公約券に基づいて貸し付けられた政治資金は、政治資金にのみ使用しなければならない。政治公約券に記載された政治公約がその達成期限までに達成された場合には、貸し付
けられた政治資金の内で、政治資金に使用した金額の返還が免除される。しかし、達成されていないと判断された場合には、その貸し付けられた政治資金は返還しなくてはならない。
(5)政治公約が達成されたかどうかは、行政からも議会からも独立した「政治公約判定委員会」が決定する。この決定にあたっては、根拠を明示し公開する必要がある。
この決定に対して、不服があるときは国会議員は裁判を提起することができる。政治公約券を発行した政治家(国会議員又は国会議員立候補者)は、政治公約券に記載の達成期限日
前であっても、政治公約判定委員会に政治公約が達成されたかどう かの判定を求めることができる。
(6)公約が達成された政治公約券の中で、国民の幸福に寄与した順に順位を付ける。この順位付けは、毎年「政治公約判定委員会」が、有権者に対する客観的で信頼性のある手法で
アンケート調査をして決定する。
(7)公約が達成された政治公約券を保有する有権者に対して、その政治公約券の幸福寄与順位に応じた金額の賞金を国が与える。例えば、この賞金の予算総額を500億円とする。
第1位の幸福寄与順位を有する公約達成の政治公約券を選択した人の人数を50万人とする。そうすると、500億円の半額の250億円を50万人で割った値である5万円が、その政治
公約券を選択した有権者に与えられる賞金となる。
第2位の幸福寄与順位を有する公約達成の政治公約券を選択した人の人数が10万人であったとする。そうすると、第1位の政治公約券のための賞金を差し引いた残金である250億円の
半額である125億円を10万人に賞金として分配する事となる。そうすると、1人あたりの賞金は12万5千円となる。このような賞金の分配を第4位までの政治公約券について行なう。
【政治公約券制度の利点】
この政治公約券制度の利点は、次のとおりである。
(1)良い政治公約をする政治家には豊富な政治資金が集まる。
(2)既存の政治家や政党でなくても、政治資金を集めることができる。
(3)政治家が政治公約の達成に懸命に努力をするようになる。そして、政党は共通の政治公約を掲げた政治家が政治公約を共同して達成するための集団になる。
(4)政治公約券を選択する国民は、政治意識が高まり、最大多数の最大幸福とは何かを真剣に考えて、賞金を得ようとする。有権者は特定地域の利益や特定の圧力団体の利益よりも国全体
の事を考える傾向が強くなる。
(5)政治家は、魅力があり達成可能な政治公約を真剣に考えるようになり、政治が活性化する。その結果、利権型政治家が減少し、行政改革が進展するようになる。
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