8. 技術進化の法則の体得と技術戦略の実行
多くの企業において、知的財産権部門の役割は最近、大きく変わりつつあります。知的財産権を行使して実施料収入
を得るというプロフィットセンターの役割を担おうとする方向と、経営戦略の立案部門の一部となろうとする方向の2つに分かれると思いま
す。この両方とも、知的財産権部門の組織目標をそのように設定するだけでなく、
知的財産権部門に、技術の目利きが必要となります。権利行使をして実施料収入を稼ぐためには、侵害品を摘発す
る嗅覚とでも言えるものが必要です。自社の特許権の中でどれが基本特許と言えるものであるかを認識し、自社の
基本特許を侵害しそうな他社製品の情報に接すると、それがピーンと来るようでないといけません。
さらに、侵害の匂いがすると感じたら、本当に侵害しているかどうかを確認するための費用を拠出する決断が可能な
マネージメントも必要です。この部分は、組織をつくり、人員をはりつけただけでは達成できないレベルです。
要は、現場のやる気と、現場のやる気を支えリスク管理の裏打ちのもとでリスクに挑戦する度胸のある経営判断が
必要です。
経営戦略の立案部門としての知的財産権部門に求められるものは、技術進化の法則を実体験から感じ、身につけて
いる人材です。このような人材は、知的財産権部門で、技術者との対話の中から、技術者が主張する発明の本質を
請求項という形で表現するという訓練を長年にわたって繰り返し、さらに、パテントマップを作成しては、
パテントマップに基づいて、どこからもまだ特許出願がされていないが、必ず重要になるという技術分野を狙って
は特許出願計画を作成して、技術者の発明を誘導し、特許出願をするという経験を積み重ねて、初めて現れるもの
です。技術進化の法則性を体験として実感し、感得した人材でなければ、経営戦略に役立つ技術戦略を立案できない
と考えます。単に、世の中に出回っている技術系雑誌での技術予測記事、学者のコメントなどを、要領よくプレゼン
テーション資料にまとめるだけのレベルで終わってしまわないようにすることが肝要です。
【関連図書】
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