4. 匿名ライセンシー制度

特許権をはじめとする知的財産権を用いて金銭を得たいという権利者の要求は強いのですが、なかなか自分からライセンスを得たいとして申し込む者が出にくいのが、現状です。
それは、ライセンス申し込みをするという行為は、侵害事実の告白でもあり、権利者がライセンスを与えるかどうかもわからない、もしかすると、差し止めをしてくるかもわからないし、自分の事業利益のほとんどを吹っ飛ばすほどの高額の実施料を求めてくるかもわからないという不確定性が、ライセンス申し込みを躊躇させているからです。
ライセンス申し込みを仲介して、誰が申し込んできたのかがわからないようにするというサービスをしている特許調査会社もあります。
しかし、権利者からすると、ライセンス対象の権利さえ特定されれば、どこかから、ライセンス申し込みがあったという情報さえわかれば、ライセンス申し込みをしてきた相手のめぼしはつきますし、ライセンス申し込みのあった特許権に注目して、権利維持などをはかります。
これが、ライセンス申し込みを躊躇させる原因となり、結局は、なかなかライセンシーを見つけられないという状況を生み、権利化されても一銭の金銭収入も生まないで、捨てられるか、権利満了するという特許権などを多く生む原因となっています。
そこで、ライセンス申し込みがあったという事実が、権利者に知られる前に、自動的にライセンスが申込者に与えられ、しかも、ライセンス対象の製品の販売総額に応じた実施料収入が確実に権利者に与えられるという仕組みが必要となります。
この仕組みの存在は、知的財産立国の大きな柱となると考えます。
なぜなら、訴訟という高額のコストと長期間の時間と、多くの人が必要な事をしないでも、知的財産を金銭に変換する安定的な道が開けるからです。
そのためには、ライセンシーとなる者にとっての匿名ライセンシー制度活用のインセンティブが必要です。
それは、将来の高額の損害賠償金の支払いリスクと、刑事罰(例:侵害罪)の適用リスクの回避です。
しかも、これらのリスク回避が、権利者に目をつけられて差し止めなどをされるリスクをおかさなくても実行できるというものです。
すなわち、単にWebサイトをアクセスしてクレジットカード番号と、製品の販売価格の範囲と、製品型式、権利の番号(例:特許番号)を入れるだけで、ライセンス符号が発行され、その符号をシールに印刷して製品に貼り付ければそれで、終わりというようにするのです。
実施料はクレジットカードから引き落とされて、権利者に渡されます。
このような仕組みが、知財立国には、必要と思いますが、いかがでしょうか。
【関連図書】

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