309. イノベーション実現における6つの罠
イノベーションは、志や理想をもとに価値創造のために想像力や予想を用いながら不確定性に挑み、新しい構造やプロセスを創造する行為である。
しかし、「志」だけではイノベーションは実現できない。下記の5つがさらに必要となる。
1. 競争優位性の源泉となる技術、ビジネスモデル
2. 信頼できる社内外の人材のネットワーク
3. 練りあげた戦略
4. 有能な管理組織
5. 健全な財務基盤
イノベーション実践のためには、「志」を維持しながら、これら5つを形成していかねばならない。しかし、これら5つの形成の過程には罠がある。
すなわち、@創業の志を忘れ、A目先の利益を追い、B戦略に溺れ、C管理組織がチャレンジ精神を奪い、D信頼できる社内外の人脈が崩れ、
E競争優位性の源泉となる技術などを失っていくという罠である。これら6つの罠を「イノベーション実現における罠」と名付ける。
この6つの罠の共通の原因は、「価値提供と対価獲得の混同」である。
価値提供とは相手にとっての良い状態の実現又は維持である。対価獲得とは貨幣経済のもとでは金銭の支払いを受けることである。したがって、
企業活動は「相手にとっての良い状態」をいかにして実現又は維持するかという価値提供を第1の目的にしなければならない。
この第1の目的をより良く達成するための進化がイノベーションでもある。しかし、対価獲得ができねば価値提供という企業活動の継続や範囲の拡大はできないので、
対価獲得は第2の目的として必要となる。
創業の志を失った経営者は、価値提供に関する目標を設定せず、対価獲得の目標(営業利益額や売上額等の財務指標による目標)だけを設定するようになり、
経理主導経営をするようになる。
経理主導経営では、企業内の企画部門や戦略部門は「相手、すなわち顧客やパートナーや社会にとっての良い状態」を実現又は維持するための商品やサービスの提供や
そのためのビジネスモデルや社内体制の企画をしなくなる。
そして、予算管理と人事管理と会計指標の統計処理と、各種の情報のとりまとめの事務局機能だけを実行するようになる。
その結果、経理主導経営を続けていると企業は上記の6つの罠に必然的に陥り、崩壊に向かう。
その企業が価値提供の能力を失い、社会的な存在価値がなくなるからである。
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