218. イノベーションを起点とした競争のレベルと変遷
イノベーションを起点とした機能の実現における競争は、次のような段階をたどることを基本パターン
とする。
レベル0: 機能の有無で競争するレベル
その機能を有することが、その機能が無い商品やサービスやシステムに対する決定的な優位性をもた
らすというレベルである。たとえば、飛行機というものが無かった時代に初めて飛行機というものが
出現した時には、飛ぶという機能があるだけで画期的であり、飛ぶ機能が無いシステムに対して、
決定的な優位性があった。しかし、このレベルでの競争の時期は一瞬で終わり、すぐにレベル1以上
での競争の時代に入る。
レベル1: 基本機能の達成度合いを示す1個以上の性能指標によって競争するレベル
例えば、飛ぶという機能については、航続距離,飛行速度,到達高度などの性能指標を設定すること
ができる。このような性能指標は、それぞれが技術方式による限界と、いかなる技術方式を
用いても越えることのできない理論限界の2種類の限界を有する。
それぞれの性能指標についての理論限界の範囲内で、各技術方式(アーキテクチャー)の間の競争
が行なわれる。
そして、各性能指標で示される性能の全部を理論限界にまで向上させることには、技術的な要因や
事業上の要因などにより無理が生じ、性能指標の間にトレードオフの関係が発生してくる。
卑近な言葉で言えば、「あちらを立てれば、こちらが立たず」という状況である。
対象とする機能に対するユーザーや市場のニーズは、通常は多様であり、複数個の性能のバランスに
ついて、一般的には複数個のクラスターが形成されるようになる。
例えば、旅客機というクラスター、貨物機というクラスター、戦闘機というクラスターである。
そして、各クラスターに適したアーキテクチャーがクラスターごとに発生するようになる。
レベル2: コストパフォーマンスによって競争するレベル
レベル1の各クラスター内に複数個の商品やサービスが発生したり、複数個のアーキテクチャーが
発生すると、そのクラスター内で、性能とコストの比であるコストパフォーマンスの競争が発生する
ようになる。コストは、いかなる性能指標にかかわらず、安いにこしたことが無いためである。
レベル3: 補助機能で競争するレベル
基本機能に関する性能についてのコストパフォーマンスの競争が発生すると、補助機能の追加による
顧客満足度の向上での競争も発生してくるようになる。単なるコスト削減競争をしていたのでは、
事業利益が得られなくなるためである。補助機能についても、基本機能と同様に性能指標があり、
レベル0からレベル2の競争が発生して、最後にはコスト競争に行き着く方向に向かう。
これらのレベル0からレベル3の競争のまわりに、顧客囲い込み競争、販売チャネル獲得競争、
標準獲得競争、知的財産権を用いた市場独占競争、ブランド競争、宣伝競争、提携競争などが複雑に
からんで、企業間の競争が行なわれる。
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