187.ビジネスモデル特許の諸問題
ビジネスモデル特許には、下記の@〜Cのような検討課題がある。@は、ビジネスモデル特許はソフトウェア応用発明の
一種であるとして、ソフトウェア応用発明の審査基準を適用をすることになる。
Aについては、厳密な属地主義を崩すことで法的対応をしようという動きが見られるが、まだ世界的に試行錯誤
の状況であると考える。Bについては、ビジネスモデル特許において多様な請求項を設定して、実施行為者を
単独に絞り込めるような努力がまずは必要である。Cについては、クライアント側ソフトウェアをカバーする
特許権に関する間接侵害品としてサーバーを位置付けられるようにして、サーバー上ソフトウェアの技術構成
に関する立証負担をほとんど失くすことができると考える。すなわち、方法の発明の特許権に対する間接侵害品かどうかは、直接侵害に用いる
かどうかの立証と、その使用における専用品または、その使用における不可欠品かどうかの立証が中心となり、
技術的な構成は問題とならないからである。そうすると、ビジネスモデル特許の権利行使対象のサーバーが
クライアント側に対して、どのような信号を送信しているかや、サーバーの運営者がどのようなサービス提供
の宣伝をしているかの情報を入手して、サーバーが直接侵害においてどのように使われているかを分析すれば
良いということになる。これは、サーバー上のソフトウェアの技術構成を分析するよりも格段に簡単である。
@発明の成立性に関する問題
自然法則の利用に該当するかどうかということ。
Aインターネット応用ビジネスモデルにおける属地主義の問題
サーバーが国外に設置されている場合、サーバー上の機能を構成要素とする請求項を持った発明での権利行使
を属地主義との関係でどのように行なえるかということ。
B共同不法行為の問題
ビジネスモデルの特許発明の実施に関与する者が複数存在していて、どの者も単独では特許発明の全体を実施
していないというビジネスモデル特許の場合の権利行使のための法的戦術の問題。
C侵害発見性の問題
ビジネスモデル特許において、権利行使対象において重要な位置付けのサーバー上のソフトウェアは入手が
困難であり、内部の技術構成を分析して侵害発見することが困難であるという問題
【参考サイト】
1. 仮想空間と現実の世界を交差する知財の空間的問題
2. 電子商取引と特許問題−保護範囲の事例研究
3. 複数主体が特許発明を実施する場合の規律−いわゆる共同直接侵害について−
4. ビジネスモデル特許と特許要件
5. ソフトウエア関連発明の保護に関する現行特許法の問題点
6. 国境を越えたソフトウェア・インターネット関連発明の法的保護
7. 分担された実施行為に対する特許間接侵害の規定の適用と問題点
【間接侵害についての特許法の条文】
(侵害とみなす行為)第101条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
1.特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、
譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
2.特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に
流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明
であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しく
は輸入又は譲渡等の申出をする行為
3.特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行
為
4.特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、
譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
5.特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く
一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特
許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等
若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
6.特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての
譲渡等又は輸出のために所持する行為
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