169.知的財産権は知的財産の流通と利用の秩序を実現する知的パイプラインシステムを形成する

音楽や絵画や小説や漫画などの著作物は、人の頭脳に作用して感動や新しい思想や喜びをもたらす。
発明や、プログラムの著作物は、人や人工知能の知的創作活動を通じて、現実の経済活動空間の存在物に作用 して様々な機能の新しい組み合わせである設計をもたらす。
商標や氏名やモデル番号やアバターなどの標識は、経済活動空間で活動をしている企業や個人や団体に関しての世間の 信用(人間の頭脳またはコンピュータがデータベースに保持している信用情報)を呼び起こす。
そして、呼び起こされた信用が、経済活動空間での活動の度合いと方向を制御する。

すなわち、著作物,発明,商標などの知的財産は、人間の頭脳やコンピュータのメモリーの集合体で形成 される仮想的な空間である知的活動空間を流通して、思想、感動、信用、設計などをもたらす。

知的活動空間では知的財産の流通は自由であるが、知的活動空間から経済活動空間に知的財産が作用して、 現実の経済的な価値を発揮するようになる段階では、秩序が必要となる。
経済活動空間での活動から得られる経済的な価値を使用して、知的活動空間での活動が人間やコンピュータに よって行なわれているために、秩序がなければ知的活動空間での活動も成り立たなくなるからである。
知的活動空間には知的財産が蓄積していくので、古い知的財産の中には全体の共有物と言えるほどに一般化 してしまい、その知的財産が経済活動空間での活動にどのように利用されて価値を発揮しても、経済活動空間 での競争関係に影響が無くなっているものもある。

すなわち、知的活動空間での知的財産のうちで、経済活動空間での競争関係に影響を与えるものについては、 経済活動空間への適用に秩序を与える必要があるために、知的財産権をそのような知的財産に与えている。

知的財産権は、知的活動空間から経済活動空間に伸びるパイプラインシステムのようなものであり、その パイプラインの中を知的財産が他に漏れることがないように流れてて、目的地に達している。 そして、パイプラインの到達した目的地では知的財産が経済活動に活用されて価値創出を行ない、活用した 主体の競争力を高めている。

知的パイプラインシステムは、知的活動空間から経済活動空間に知的財産を流して経済活動空間における価値 創出の活動を活発化させるとともに、知的活動空間での知的財産の創造を促すという秩序を実現するものである。

この知的パイプラインシステムの実現手段の一つとして、知的財産権制度がある。
したがって、知的財産権制度は経済活動空間での価値創出に寄与するように設計されねばならない。


知的活動空間における知的創作物を経済活動空間において活用するために、知的活動空間から知的 創作物を経済活動空間に流し込んだり、知的創作物間の反応を起させるためのパイプが知的財産権 だと考える。
パイプの壁を、経済活動空間において外から眺めていると、パイプの壁が参入障壁のようにも見える。 しかし、パイプは合流したり、分岐したり、タンクや反応炉に出入りして、経済活動空間における 価値創出に使用される。秩序ある知的創作物の流れを経済活動空間において形成するのが、知的財産 権であると思う。
事業部門もまた、単に他社の参入を阻止することだけを知的財産権に求めているのではなく、新しい 価値創出のための活動に使い、新市場を形成することも望むことが多々ある。このように、多面的な 機能を有するのが知的財産権であると思う。
知的財産権の本質は知的創作物の流れに秩序を与え、価値創出を促進するパイプであると思う。

second lifeは、上記の知的活動空間の一部がコンピュー タネットワークのパワーを用いて、現実世界に実現したものとも言える。これは、従来の知的財産権 制度の大変革を促す存在となるであろう。
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