121. 優秀発明者は人間組織を活性化する

企業,官庁,NPO,病院,学校などさまざまな人間組織では、組織創設の頃は創設メンバーが原動力とな り、次々に新しい問題を解決して組織構築や事業創造をしていきますので、組織の活性度は高い状態を 保ちます。
しかし、しばらくしますと、組織や事業は安定してきて、マニュアルや内部規則が充実してきて、 既存の問題を既存の方法で既存組織によって解決することがほとんどであると言う状態になります。
そうすると、組織からはチャレンジ精神は減退し、新しい発想がなかなか生じなくなり、前例踏襲と 横並び、問題先送りと責任回避を原則として発想し行動する官僚主義的メンバーが勢力を伸ばしてい くと言うことになっていきます。

そして、新たな問題が発生して、創造的な問題解決をすべき事態になっていても、マニュアルや前例に 頼って問題に対処するだけになったり、問題そのものを無視したり隠蔽したり、さらには問題の存在を 認識することもできないというようにもなります。

創造的活性度の衰えた組織では、メンバーで会議をして問題発見と問題解決を図っても、アイデアが 何も出ないか、アイデアがたまに出ても他のメンバーによってつぶされるという事になり、議論も手続 き論ばかりになりますし、新しい観点で事態を把握して問題点や解決策を提示すると言う事もありません。 言い換えると、前例という軸上で責任回避のために意見がプラス側とマイナス側を行ったり来たり するのみで、会議への参加人数が増加すればするほどに、会議の成果は低下します。
こうなると、その組織は崩壊に向かって真っ逆さまに墜落していきます。

このような組織を再活性化するためには、組織のトップが組織を再活性化するという強い意志を持ち、 組織風土を創造的なものにし、問題発見や創造的な問題解決を奨励し、創造的発想のできる人材を要所 に投入して、既存メンバーの発想パターンを変革することが必要となります。
十分な発明実績のある優秀発明者は、問題発見能力,問題分析能力,創造的問題解決能力,困難を克 服する執念などに優れていますので、組織を創造的な集団に再生するための貴重な人材になります。
組織のトップが、組織メンバーに対して責任回避や前例踏襲の態度を許さないという強い指導力を発揮 すると、それまで5−5=0という演算のように打ち消しあってほぼゼロになっていた組織の創造的活性度が 、5+5=10という演算のように足し算になって、向上していきます。
さらに、創造力の豊かな発明者を外部から招いて、重要な会議に参加してもらい、新たな観点からの 新発想を注入してもらったり、創造の気風を醸成していき、組織が刺激を受けることで、その組織の 創造的活性度は、(5+5)×5=50という掛け算のように、飛躍的に向上します。
優秀発明者を人間組織の活性化のためのビタミン剤のように活用するという観点も重要です。

【参考サイト】
発明者フォーラム
発明者フォーラムのメーリングリスト
大企業病の克服
大企業病
第5章「官僚制組織」
第12章「組織の自己革新:概論」

特許戦略メモに戻る      前ページ      次ページ

(C) Copyright 2006 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved

戦略のイメージに合うフリー素材の動画gifを、http://www.atjp.net からダウンロードして活用しています。