5.各携帯電話基地局に対空フェーズドアレイアンテナを追加し、電磁エネルギー集中によるミサイル迎撃システムの全国配備が必要
中国が日本へのミサイル攻撃の体制を実戦配備完了しており、現在の日本の防衛体制ではこれに対処できない。
日本全土をターゲットにして配備されているミサイルの主力はDF−21と
呼ばれ射程距離が2000Km〜3000Kmであり、飛行速度はマッハ10(時速約12000Km)、長さは10メートル、弾体直径は1.4メートル程度であり、核弾頭を搭載可能である。
原子力発電所や多くの社会インフラがターゲットとされる可能性があり、防衛対象箇所を事前には特定できないため、パトリオットミサイルの配備では対応できないからである。(参照サイト1)
そこで、日本全体を覆う携帯電話基地局のネットワークをミサイル迎撃にも活用する。
携帯電話基地局は、マイクロセルという半径500メートルほどの円形領域を受け持っている。逆に言うと、日本はほぼ500メートル間隔の格子状に携帯電話
基地局が配備されていることになる。
そうすると50Km四方の領域内には、100×100=10000個の携帯電話基地局が存在することになる。
携帯電話基地局に追加配備された対空フェーズドアレイアンテナを同期して運用し、各基地局に蓄えた緊急時用電気エネルギーをミサイル迎撃のために、
上空を飛行するミサイルに一点集中させるのである。
携帯電話基地局は、平時には50W程度の送信電力で運用している。しかし、ミサイル迎撃時には100KW程度の電磁波を上空に向けて送信するようにする。
これは、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタで20Kg程度のものに蓄えた電力と参照サイト2に記載の
技術を用いれば十分に可能と考える。
そして、10000個の対空フェーズドアレイアンテナからの送信総電力は100万KWとなる。
100万KWというと、稼働中の大飯原発3号機の定格発電量である118万KWと同程度となる。このエネルギーの全部が飛行中のミサイル周囲に到達するものでもないが、
ミサイルの飛行推力発生用の噴射孔周囲にプラズマを発生させる程度のエネルギー集中を実現できれば、
飛行推力発生部分からミサイル全体を熔かすか、ミサイル近辺で爆風を発生させてミサイルを破壊し、ミサイル迎撃が可能となると考える。これは、太平洋戦争の際に日本海軍がB29爆撃機の撃墜のために進めていた「熱号作戦」
、米国のレーガン政権時代のSDI構想と同様のプラズマ兵器の防衛利用である。(参照サイト3)
なお、大気中の所定領域にマイクロ波を集中させることで、大気中にプラズマ(ブレークダウンプラズマ)を発生させることが可能なことは参照サイト4に記載の実験で明らかになっている。
参照サイト4の技術を詳細に示した特開2003-121358号によると、ブレークダウン発光したプラズマの大きさは、横22.9mm,縦10.2mmであると記載されており、
図からは奥行きは約10mmである。
よって、発生したプラズマの体積は約2立方センチメートルである。この公開特許公報の【0077】欄の記載から見て、この程度の体積にプラズマを発生させるために必要なマイクロ波
電力の閾値は50KWであることがわかる。すなわち、1立方センチあたり25KWが閾値である。
この実験の場合のマイクロ波の仕様は、出力が80kWでパルス幅は5μs、周波数は9.4GHz、パワー密度が約30kW/cm2 、繰り返し周波数は10Hzであった。
すなわち、5μsの継続時間の80KWのパルス(その電力量は、0.11ミリWh)を1秒間に10回送出している。1秒あたり50μsのデューティ比、
すなわち、デューティ比は5/100000であるので、1時間あたりの送信電力量は、80kWh×5/100000=0.004kWh=4Whとなる。
1時間当たり4Wh程度の電力量で2立方センチの体積の領域にプラズマを発生させたこととなる。
すなわち、参照サイト4に記載の現象をチャンバー内ではなく、飛行中のミサイルの付近で発生させれば良いのである。
5μsの時間の間にマッハ10のミサイルは17センチメートルしか移動しない。したがって、20センチ程度の幅のプラズマボールをミサイルの近くで形成すれば、プラズマによる
爆風をミサイルに与えて、ミサイルの軌道をそらせることは少なくとも可能となる。
送信するマイクロ波をパルス状にすることや、多数の携帯電話基地局から投射する電磁波の位相制御の工夫によって、もっと少ないエネルギーでプラズマを発生させることができるようになると考える。
マイクロ波を飛行体に向けて送信し、飛行体の付近でプラズマを発生させる実験は、マイクロ波ロケットというテーマで行なわれている。
マイクロ波を地上から小型飛行体に照射して、その小型飛行体の飛行エネルギーを供給するものであるが、これを応用するとミサイル迎撃も可能と考える。
マイクロ波でロケットを発射した実験が、東京大学小紫研究室行なわれている。
上記の図の出典: 「マイクロ波による小型飛行体へのエネルギー伝送」http://www.kml.k.u-tokyo.ac.jp/wp/researches.html#microwave
参照サイト5に記載のバッテリーを用いれば、1.2kWの電力の放出を0.8秒維持できる。そして、価格は、12.5万円である。
また、米国ではAirborne Laserというシステムが実用化されている。大出力のレーザビーム発射装置とターゲット追跡装置を用いて、飛行中のミサイルにレーザビームを照射してミサイルを爆破するものである。
このシステムを日本にも導入すべきである。
上記の写真の出典: http://www.fas.org/spp/starwars/program/abl.htm
Airborne Laserシステムの説明の動画
【参照サイト】
1. 中国軍ミサイルの「第一波飽和攻撃」で日本は壊滅。 長距離巡航ミサイルを迎撃できない防衛体制の現状
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36856
2. マイクロ波送電用フェーズドアレーの現状と課題
http://www.ieice.org/~wpt/paper/SPS2006-01.pdf
3. SDI計画の裏舞台
http://rerundata.net/ura/hexagon/floors/hatchA3F/plasner.html
4. マイクロ波ビーム重畳法を応用したプラズマ発生分光分析方法
http://jstshingi.jp/2005/pdf/072706.pdf
この技術の詳細は、特開2003-121358号に掲載されている。
5. ラブロス、スーパーキャパシタ/リチウムイオン/鉛の複合型非常用蓄電池
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20120802_550834.html
国家戦略論に戻る 前ページ 次ページ
(C) Copyright 2013 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved
このページの先頭で使用している写真は、Photo by (c)Tomo.Yun です。